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革新的な練習方法を作り上げた仙台育英高校野球部 竹田利秋・元監督

 2016/01/27 高校野球と甲子園
 

高校野球にメンタルトレーニングを導入

また、トレーニングおよびメンタルにおいて専門家を招き、多種にわたって練習方法を取り入れている。高校野球にいち早く科学的トレーニングを導入し野球界にいまだ残る根性論からの脱却を果たした。

生理学の分野におけるトレーニング方法の専門家としては、東海大学の田中誠一教授。メンタル面では福島大の白石豊助教授が担当。

いずれも今では著名人となり直接指導に訪れることは少なくなったが、球場横のクラブハウスを使って、当初は頻繁に講義を受けることができた。

「自分で指導をしてきて、技術的なことはともかくとして肉体的なこと、精神的なことについてもっと専門的な知識がほしかったんです。ずっとスパルタでやってきた自分ですが、何か違うぞ、もう一度学ぶべきではないかと思ったのが発端ですね。そう思っていた矢先、念ずれば通るでこのお二方を紹介で知った。生徒も勉強になりますが、私の方がうんと勉強になりましたよ。」

ちょうど東北高校をやめ、仙台育英に赴任したばかりの頃だった。17年と5ヶ月、ただひたすら前だけを見て歩いた後に、ほんのしばらくあいた空白の日々。

そして新しいチームと出会い竹田監督はそのときを、「自分を変えるチャンスだ」と思ったという。

休むことも練習の一つ

結果的に、指導者としての大きな転換のきっかけに。本当に練習の仕方から考え方すべてが変わった。終わる事を知らなかったはずのノックが、いつのまにか消え、休むことなど考えられなかったが、それも練習のひとつと思うようになった。量に頼ってきたこれまでの方法に一石を投じたわけである。

ゴロを捕ることでも、体が硬かったら捕れない。柔らかくすることの方が先だと知りました。

その結果、捕れるようになっていく。走るにしてもがむしゃらではなく、足の使い方から正しく歩く、走ることができて速くなる。一つ一つをしっかりとした理論づけにおいてやるので生徒も理解して目的意識をもって行動するようになりました。裏づけがあってこその練習。やみくもに根性ばかりで追う練習はおしまい。これは革命だったですね。」

逆にメンタルの分野は、かねてから関心があってすでに自己流で練習に取り入れていたのだが、それが本格化した。竹田監督の口癖は、「人間が野球をする。」白石先生を招いてからは、ヨガを取り入れるなどにして心・技・体のすべての練習が充実した。

「心の話は難しいけど面白い。人間の本性はギリギリのところで出るです。逆にギリギリの体験をしないと出ない。その場面で選手のもっている能力を出し切りたいから、私は心理学の勉強をするんです。」

選手たちはみな、ノートを3冊持っている。1冊は監督用。そして田中先生用。白石先生用。

卒業時には、どんな字が並ぶのだろうか。これは一生の財産といっても過言でもないだろう。

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ライター紹介 ライター一覧

藤井利香

藤井利香

東京都生まれ。日本大学卒。
高校時代は(弱小)ソフトボール部の主将・投手・4番として活躍。大学では、体育会ラグビー部の紅一点マネージャー。関東大学リーグ戦グループ・学生連盟の役員としても活動。
卒業後は商社に勤務するも、スポーツとのかかわりが捨てがたく、ラグビー月刊誌の編集に転職。5年の勤務のあと、フリーライターとして独立。高校野球を皮切りに、プロ野球、ラグビー、バレーボールなどのスポーツ取材を長く行う。現在は、スポーツのほかに人物インタビューを得意とし、また以前から興味のあった福祉関係の取材等も行っている。

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