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オーバートレーニング症候群の症状チェック・診断・治療・全知識

 2018/03/04 ケガと予防法
  21,531 Views

多くのプロスポーツ選手は自分のパフォーマンスを最大化させるために日夜、練習・トレーニングをしています。

しかし疲労がとれていない状態で運動をするとオーバートレーニング症候群になってしまうことがあります。

今回は

・医師の豊田早苗先生
・理学療法士の桜井佑葵先生

の2名が、試合はおろか、練習する事も困難なほどの疲労状態になるオーバートレーニング症候群の症状・治し方について解説していきます。

この記事を書いた人


豊田早苗(医師)とよだクリニック医長
鳥取大学卒業・総合診療医学会・認知症予防学会に所属。
とよだクリニック医長。総合診療医として診療科を問わず患者さんの病気・症状に向きあい治療を行なっている。




桜井佑葵(理学療法士)
整形外科勤務。10年間、毎日ケガに苦しむ患者さんと向き合いリハビリを行っている。

オーバートレーニング症候群とは

簡単にいうと、トレーニングのしすぎによって回復が追いつかずに疲れが取れない状態です。

  • スポーツでの疲労が十分に回復せずに積み重なって引き起こされる慢性的な疲労。
  • 過剰なトレーニングを長期間続けたことで、パフォーマンスや運動機能が低下し、疲労が回復しなくなくなる。

オーバートレーニング症候群は疲労が蓄積された慢性疲労状態です。

一気に激しいトレーニングをして疲労するオーバーワークとは違います。

症候群とは?

●症候群という言葉は、原因が特定できずにはっきりとした病名がつけられない

●ですが共通したいくつかの症状がみられる状態をいいます。

●つまりオーバートレーニング症候群はまだ原因や病態などがはっきりとわかっていないため、○○病と名前つける事ができません。

オーバートレーニング症候群の症状

オーバートレーニング症候群の症状は急に起こるというよりは段階的に進んでいくのが特徴です。

段階① 日常生活では問題はなく、競技の成績低下やパフォーマンス低下がみられます。

段階② トレーニングの負荷が大きくなると、体が思うように動かず、疲労を感じるようになります。

段階③ 症状が進行するにつれ、軽いトレーニングでも疲労しやすくなり、日常生活にも支障をきたすことがあります。

その症状は体に現れる身体症状と、精神的な症状があります。

身体的症状

  • 慢性的な疲労
  • 全身的な倦怠感
  • 動悸
  • 息切れ
  • 胸の痛み
  • 食欲低下
  • 手足のしびれ
  • 微熱
  • 体重の減少
  • 安静時の脈拍上昇
  • 血圧上昇

精神的な症状

  • うつ
  • 不眠
  • 不安感
  • 焦り
  • 集中力の低下
  • 活気がなくなる
  • モチベーションの低下
  • イライラ

また特徴として

  • 持久力系のスポーツに起きやすい
  • 検査でも異常が見つからないことが多い
  • POMS(心理テストの1つ)で、不安、抑うつなどのネガティブ因子が高くなる

といった事もあげられます。

オーバートレーニング症候群の症状の重症度

重症度

軽度

●日常生活ではほとんど症状がありません。

●ジョギング程度では問題がないですが、スピードが上がると着いていけなくなります。

中等度

●ジョギングでもややつらくなります。

●日常生活でも疲労が出ます。

●症状として倦怠感、立ちくらみなどが起きます。

●稀に胸痛や下痢などの症状もみられます。

重度

●ジョギングでもかなりつらくなります。

●ほとんどトレーニングが出来ない状態になります。

●日常生活での疲労も強くなります。

●不眠症状、早期覚醒などの睡眠障害やうつ病の症状も出てしまいます。

オーバートレーニング症候群の原因

オーバートレーニング症候群は肉体的、精神的なストレスによって脳にある視床下部や脳下垂体から分泌されるホルモンのバランスが崩れる事が原因ではないかといわれています。

しかし、まだ詳しい事は解明されていませんが脳神経系の機能になんらかの異常が生じるのではないかというのが有力とされています。

オーバートレーニング症候群の原因は以下の通りです。

  • 急激なトレーニング・負荷の増大
  • 過密な試合・練習スケジュール
  • 休養の不足
  • 睡眠の不足
  • 栄養の不足
  • 仕事や勉強、日常生活での過剰なストレス
  • 風邪などの病気からの回復期での不適切なトレーニング

オーバートレーニング症候群になりやすいスポーツ

オーバートレーニング症候群はサッカーや陸上の長距離選手に多く見られます。

持久力系のスポーツに多いといわれますが、海外では野球や陸上の投てきのようパワー系の競技選手の報告もみられます。

また陸上競技や水泳、ウエイトリフティングなどの競技はタイムや重さなど数値化できる指標があるためパフォーマンスの低下が明らかになり早期発見しやすいです。

しかしサッカーなどではパフォーマンスの低下を数値化する事が困難であるため早期発見が難しくなります。

オーバートレーニング症候群になりやすい人の特徴

オーバートレーニング症候群になりやすいのは真面目で几帳面な人が多いといわれています。

真面目で几帳面な性格の人は、パフォーマンスの低下が見られると、自分のトレーニングが足らないと思いがちでさらに追い込んでしまう傾向にあります。

他者に差をつけられてしまう、パフォーマンスが低下してしまうと思いがちでトレーニングを休むということを受け入れにくくなります。

こういった傾向からオーバートレーニング症候群を発症してしまう事が多いのです。

オーバートレーニング症候群になったスポーツ選手

大久保嘉人

サッカー選手
2010年のサッカー南アフリカワールドカップの日本代表として出場。凄まじい運動量で日本代表のベスト16進出に大きく貢献をするが、大会終了後にオーバートレーニング症候群を発症。
その後完全復活をし、Jリーグ3年連続得点王の偉業を達成。現在は川崎フロンターレに所属。

権田修一


サッカー選手
JリーグFC東京のゴールキーパーとして活躍するも、2015年にオーバートレーニング症候群を発症。
現在は復帰し、サガン鳥栖に在籍。試合に出場している。

森崎浩司


サッカー選手 
Jリーグサンフレッチェ広島に在籍していた2008年末に症状が出始め、2009年1月にオーバートレーニング症候群とクラブが公式発表。同年8月にチーム合流、11年に実戦復帰した。2016年引退。

市川大祐


サッカー選手
1993年にオーバートレーニング症候群の診断を受け、代表に選ばれていたワールドユース選手権を辞退。約1ヶ月の休養後に復帰した。

オーバートレーニング症候群の診断は?何科の病院?

オーバートレーニング症候群が疑われたらスポーツに精通したドクターがいるスポーツ外来などを受診するのが最も良いかと思いますが、スポーツ外来を設置している病院は、全国にあまり多くありません。

ですので、身体的な症状は整形外科、精神的な症状は心療内科やメンタルクリニックを受診するようにすると良いです。

オーバートレーニング症候群は、これがあるとオーバートレーニング症候群と言える特有の症状がないため確定診断が困難です。

また、検査の数値や画像所見で、これだという決定的なものがないのも診断を困難にしている理由です。

疲労が蓄積されていくに従って、起床時の脈拍数が増加すると言われており、起床時の脈拍数を計測・記録することで、オーバートレーニング症候群を早期発見することができます。

個人差もありますが、起床時の脈拍が通常よりも、10拍/分多い時は、トレーニングのしすぎです。休養を取るようにしましょう。

また

  • 運動中止後10分経過しても息切れが続く
  • 運動中止後10分経過しても脈拍が100拍/分以上ある。
  • 運動後に吐き気や腹痛がある
  • 運動後の夜、寝つきが悪い、その翌日は目覚めが悪い

というのも診断の目安となります。

そのほか日常的に以下のようなコンディションチェックをまめにしておくことが早期発見に繋がります。

  • 無理なく良好なパフォーマンスが発揮されている
  • パフォーマンスが安定している
  • 特別な苦痛や症状がない
  • 疲労しても回復が早い
  • トレーニングに対して意欲がある

また客観的な指標として脈拍の他には

  • 体重
  • 体温
  • 尿潜血の有無

などにいつもと違う変化がないかどうかをチェックしておく事も重要です。

オーバートレーニング症候群にならないために

疲労が蓄積してくると、脈拍数の増加、体温の上昇、睡眠障害(寝付きにくい、眠った気がしない、睡眠時間の短縮など)が起こります。

こうした体からのサインを見逃さないことがオーバートレーニング症候群の予防につながります。

そこで、お勧めなのが、トレーニングノートです。

日々のトレーニング内容と一緒に、朝起きた時の脈拍数、体温、睡眠の状態を書いておきます。

記録しておくことで、普段と違う異変に気づきやすくなります。

異変に気づいたら、それは、トレーニングのしすぎと認識し、トレーニング内容を見直すようにしましょう。

心理テスト

精神面の症状がみられることから、心理テストを行うこともオーバートレーニング症候群の早期発見には大切です。

心理テストの種類

●心理的プロフィールテスト(POMS)

過去1年間の気分の状態について65の質問に答えていく心理テスト

・緊張
・抑うつ
・怒り
・活気
・疲労
・混乱

の6項目の気分が測定できる。

●心理的競技能力診断検査(DIPCA3)
スポーツの試合場面について52の質問に答えていくテスト

忍耐力
闘争心
集中力
自己コントロール能力
判断力
協調性
自己実現意欲
勝利への意欲
自信
リラックス能力
決断力
予想力

のスポーツに必要な12のメンタル要素を把握することができる。

●体競技意欲テスト
スポーツ選手の競技へのやる気を評価します。メンタルトレーニングやコーチングと共に症状を改善していくために使われるテストです。

オーバートレーニング症候群の治療法

オーバートレーニング症候群の治療法は確立されたものはまだありませんが次の方法で治していきます。

  • 原則としてトレーニングを休止しします。
  • 休養をとって回復を待つことが大切です。
  • 身体的にも精神的にも休む事を優先します。

激しいトレーニングを休止して身体を休める事がまず大切です。重症であれば完全に休養する事が進められますが、軽度の場合は軽めのトレーニングを継続する事が良い事もあります。

また精神面の症状に対しては抗うつ剤や睡眠薬などを服用したうつ病治療が行われることもあります。

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まとめ

●オーバートレーニング症候群は肉体的、精神的な慢性疲労が回復しない状態である

●確定診断は難しいが、日常的なパフォーマンスや疲労具合をチェックしておくことが早期発見となる

豊田早苗(医師)●文
桜井佑葵(理学療法士)●文

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ライター紹介 ライター一覧

豊田早苗

豊田早苗

医師

●経歴
2000年 鳥取大学医学部卒業
2001年 医師免許取得
2001年~2004年 島根県で内科医、総合診療医として勤務
2004年 勤務しながら、認知症も含めた精神科医療を学ぶ
2005年 とよだクリニック開業(精神科・心療内科・神経内科・内科)

●参加学会

総合診療医学会
認知症予防学会

●著書→コチラ 

私は、普段、診療科を問わず、様々な病気や症状に悩んでおられれ方の相談対応にあたっています。
運動は、生活習慣病の予防やストレス発散に、とても効果的で、患者さんに日常生活に運動を取り入れるよう勧めることが多々あります。ですが、急に運動を始めるとケガしやすいため、ケガの予防、さらには、ケガした際の応急処置や対応についても指導するようにしています。
ここには数多くのケガに関する記事が掲載されています。
これらの記事が皆さんがケガについての正しい知識や対処法について学ぶ機会となり、運動を楽しく続ける参考になれば良いなあと思っています。


●桜井佑葵(理学療法士)

理学療法士として10年目、これまで総合病院、整形外科クリニック、訪問リハビリなどで多くの疾患のリハビリを経験。現在、病院で働きながらジュニア期のサッカーチームの怪我予防の指導やトレーナー業務も兼務中。

自身の理学療法士としての経験、スポーツ経験を生かして読者に有益な情報を与えられるように執筆させていただきます。

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