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膝の後十字靭帯(PCL)損傷を完治へ!症状・治療・リハビリ全知識

 2017/12/24 ケガと予防法
  26,807 Views

膝の靭帯損傷の中では少ない後十字靭帯損傷。しかしケガをしてしまうと膝の腫れ、関節のぐらつき、痛みが起きてスポーツに大きな支障をきたします。

今回は

・医師の増田陽子先生
・理学療法士の桜井佑葵先生

の2名が後十字靭帯損傷の症状・治療・リハビリ・テーピング・サポーターの選び方について解説していきます。

後十字靭帯とは?

膝の関節にある靭帯で大腿骨(太ももの骨)から脛骨(スネの骨)に向かって斜めに走行しています。

図のように前十字靭帯とクロスするように交差しています。

後十字靭帯は前十字靭帯よりも太いため、強度も約2倍といわれており、完全に断裂する事は少なく、損傷は部分断裂がほとんどです。

後十字靭帯の役割

●脛骨が大腿骨に対して後方にズレるのを抑える

●脛骨が大腿骨に対して内旋(内側にひねる)をを抑える

後十字靭帯靭帯損傷の原因

後十字靭帯損傷の原因

●スポーツ中の激しい接触による外傷

 ・ラグビーやサッカーでのタックルなど

●交通事故による外傷

 ・交通事故でダッシュボードに強く打ちつけられるなど

膝を曲げたまま地面に強打するなどの強い外力によって脛骨が後方にズレる事でケガをします。

衝撃が強い場合、後十字靭帯の脛骨付着部分がはく離骨折を起こすこともあります。

また前十字靭帯損傷、側副靭帯損傷、半月板損傷を合併する事もあります。

後十字靭帯損傷の症状

後十字靭帯損傷になると以下のような症状があります。

後十字靭帯損傷の症状
●膝の腫れ

●発赤

●関節の不安定感・ぐらつき

●膝崩れ(歩き始め、ジャンプの着地などで膝がガクッと力が抜ける)

●疼痛

膝の裏に疼痛が出ます。

ケガの後は強い痛みのため歩行や立ち上がりが困難で日常生活に支障をきたします。

強い痛みは1~2週間程度すると落ち着き、腫れも引いてくる事から歩く事に支障はなくなってきます。

しかし膝がぐらつくような不安定感が生じます。

増田先生
痛みもそうですが、歩けなくなり自分の足が思うように動かせなくなるので直ぐに分かるでしょう。普通に歩いても(痛みで歩けない場合が多いですが)、足を引きずるようになります。
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後十字靭帯損傷の診断

後十字靭帯損傷が疑われたら、MRI検査を受けてチェックします。

また以下の診断テストも行います。

ザギング徴候

仰向けで膝を曲げて寝ます。

怪我をしている方の膝をみると、お皿の下の脛骨の部分が陥凹していると陽性となり後十字靭帯損傷の可能性が高いです。

grabity(グラビティ)テスト

仰向けで寝て、踵を持ち、股関節と膝を曲げていきます。

お皿の下の脛骨の部分が重力によって、陥凹してくると陽性で後十字靭帯損傷の可能性が高いです。

後方引き出しテスト

仰向けで膝を曲げた状態で、脛骨を把持して前後に動かします。

後方への動揺が強ければ後十字靭帯損傷の可能性が高いです。

増田先生
後方への動揺とは、後方へ膝をずらした場合、普段ではありえないくらい膝自体が後ろへスライドできたり、膝の皿の部分がへこんだりすることを動揺するという言い方をします。(動きがおかしい場合ですね)

後十字靭帯損傷の治療方法

保存療法

後十字靭帯損傷はそのほとんどが手術をしないで保存療法で治していきます。

その理由は、

  • 大腿骨と脛骨の形は、体重をかけたときでも後ろ方向への不安定性が生じにくい
  • 前十字靭帯靭帯のように半月板や他の靭帯損傷との合併が少ない
  • 後十字靭帯は血流供給が豊富なので修復しやすい

という3点です。

手術

手術療法が選択される場合は、後十字靭帯の完全断裂、他の靭帯損傷を合併している場合です。

手術療法は主に、自分の腱を採取して、靭帯があった個所に腱を移植する靭帯再建術が行われます。

後十字靭帯損傷用のサポーター

後十字靭帯損傷の際のサポーターの大きな役割は脛骨が後方へズレるのを抑える事です。膝の後面部分にズレを抑えるストラップが付いているものが望ましいです。

後十字靭帯損傷のリハビリ

後十字靭帯損傷はそのほとんどが保存療法で治療しますが、膝の不安定性が強い場合や、完全断裂の場合は手術を行う事もあります。

一般的におおよそスポーツ復帰には4~5か月程度と言われています。大まかにですが保存療法と手術療法の場合のリハビリの流れを説明します。

保存療法の場合のリハビリ

保存療法のリハビリ

ケガ後~2週間

炎症による腫れや熱感、痛みの沈静化のためにRICE処置を行う

●RICE処置とは

Rest(安静): 患部を極力動かさない。

Ice(冷却): 患部を冷やして血管を収縮させて腫れや熱感を最小限に留める

Compression(圧迫): 患部を適度に圧迫して腫れ、炎症を抑える

増田先生
患部を冷やす際には、15分冷やしたらやめ、また痛みが出だしたら15分冷やすというようにしましょう。ずっと冷やすのは却ってダメージを与えてしまいます。

Elevation(挙上): 心臓よりも高い位置に患部を置き腫れ、炎症を抑える

●荷重をかけないよう大腿四頭筋の訓練

●膝の可動域訓練(角度は60°まで)

2~12週

●膝の可動域訓練(屈曲角度90°まで)

●筋力訓練

12週以降

●医師の診断の元、膝の可動域角度を上げていく

●徐々に荷重位での筋力トレーニングを開始

●軽めのランニングなど開始

16週以降

●実践的なターンや、ダッシュなどのトレーニング

●医師の判断の元、状態をみてスポーツ復帰

手術後のリハビリ

手術した場合のリハビリ

手術後~3週後

●RICE処置を行い炎症の沈静化

●荷重をかけないように松葉杖の使用

●膝60度までの屈曲

3~6週後

●部分的に荷重をかけていく。最初は1/3の体重から開始

●4週後で2/3の荷重

●5週後で全荷重

6~12週後

●膝120度までの屈曲

●スクワット訓練(屈曲60度まで)

●エアロバイク

12~16週後

●膝135度までの屈曲

●ジョギング開始

16週~24週後

●膝の完全屈曲

●ターンやダッシュなど実践的なトレーニング

後十字靭帯損傷は後遺症に注意

大腿四頭筋

後十字靭帯損傷後の後遺症を残さないためのリハビリとして重要になるのは大腿四頭筋の筋力を強くする事です。

その理由は、後十字靭帯が損傷されると脛骨が大腿骨に対して、後方に落ち込みやすくなります。

大腿四頭筋は脛骨を前方に引く作用があり、後方への落ち込みを防止する事が出来るのです。

この筋肉をしっかりと鍛える事で、後十字靭帯損傷後の後遺症を残さずにスポーツ復帰する事が出来ます。

大腿四頭筋とは

太ももの前面にある筋肉で、その名の通り4つの筋肉から成り立っています。

大腿直筋、中間広筋、内側広筋、外側広筋と呼ばれる4つの筋肉です。主に膝を伸ばす作用に働き、スポーツ動作において重要な筋肉となります。

大腿四頭筋のトレーニング方法

膝を伸ばして膝の裏に小さめのボールを置きます。ボールがなければ、バスタオルを丸めた物や枕などでもOKです。

踵を床から離すように上に持ち上げます。この時に太ももにグッと力を入れるように意識します。

椅子に腰かけて、膝を真っ直ぐに伸ばします。この時に太ももにグッと力を入れるように意識します。段階に合わせて足に錘やセラバンドなどを使用して負荷をかけていきます。

テーピング方法

後十字靭帯に負担のかかる脛骨の内旋を制動するテーピング方法をお伝えします。
テープは伸縮性のあるキネシオロジーテープを使用します。

膝を軽く曲げた状態で、膝のお皿の下にある骨の突出部から外側へ、膝の後面を通り太ももの前面まで巻いていきます。テープに皺が寄らない程度に巻いていきます。

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まとめ

●後十字靭帯は膝の関節内にある靭帯で、脛骨を後方へのズレ、脛骨の内旋方向へのズレを制動している役割がある。

●後十字靭帯損傷はまれだが、スポーツや交通事故で膝を曲げた状態で脛骨を強打した際などに損傷しやすい。

●後十字靭帯損傷後の予後は比較的良好で、スポーツ復帰には4ヶ月程度要する

●後遺症を残さないためには大腿四頭筋の筋力トレーニングが重要である。

増田陽子(医師)●文
桜井佑葵(理学療法士)●文

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ライター紹介 ライター一覧

増田陽子

増田陽子

救急医


●資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

●経歴
2009年 St. Mathew University School of Medicine卒業
20010年 米国医師免許取得
20011年 カリブ海医師免許・日本医師免許取得
2012年 Larkin Hospitalで研修医
2015年 救急医として勤務しながら、カリブ海の島にて老人医療を行なう
現在・育児にも奮闘中

ビーチと海が大好きでカリブ海にポジションを見つけて住むようになりました。
カリブ海では、日本の高度先進医療のような設備が殆ど無く、レントゲンとCTだけで患者さんを診断します。
その分医師たちのスキルアップが求められ、日々勉強中です。
救急医療に従事していますと、少しの怪我でもその対処法によっては予後が悪くなったり、逆に適切な治療を施したため後遺症や傷口も目立たず、元気に暮らしていらっしゃる方たちも多く見てきました。
このサイトでは少しでも多くの方たちに簡単で適切な処置方法などを伝えていけたらいいなと思っています。


●桜井佑葵(理学療法士)

理学療法士として10年目、これまで総合病院、整形外科クリニック、訪問リハビリなどで多くの疾患のリハビリを経験。現在、病院で働きながらジュニア期のサッカーチームの怪我予防の指導やトレーナー業務も兼務中。

自身の理学療法士としての経験、スポーツ経験を生かして読者に有益な情報を与えられるように執筆させていただきます。

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