魔裟斗や武尊に学ぶ、勝ちに恵まれないキックボクサーが意識すべきある数字とは
キックボクシングにおける蹴りの重要性
ボクシングの世界チャンピオンがキックボクサーに転身するも連戦連敗というケースはよくある。
K-1ではマイク・ベルナルドやフランソワ・ボタの印象が強いだろう。前者に関しては世界トーナメントで優勝するなど活躍を見せたが、ローキックでダウン、相手に前蹴りやミドルキックで距離を取られパンチが当たらない、という試合が多くあった。
また、世界最速で3階級制覇を果たした井岡一翔に唯一黒星を付けた(2016年12月31日現在)アムナット・ルエンロンもキックボクシングイベント「Knock Out」では那須川天心を相手にKO負けを喫している。フィニッシュはフェイントを入れながらのボディへのフックだった。ボクシングの元世界チャンピオンが違う畑の選手にパンチで負ける、これは言うまでもなく蹴りも織り交ぜたコンビネーションがあってこその結果。
しかし、ハイキックでない限りは意識が飛んでの一発KOは考えらえない。そのためたとえプロの選手であっても、相手を倒そうとすればするほどパンチのみの攻撃になってしまいがちだ。新生K-1での魔裟斗による実況でも、そのような指摘を度々耳にする。
まずはその魔裟斗の試合をロー、ミドル、ヒザの攻撃に着目して蹴りの数を見てみよう。前蹴りに関してはコンビネーションにつなげるというよりも前に出てくる相手を止める、という意味合いが強いので、今回これについては考えない。
蹴りの数で見るキックボクシングの攻防
マイク・ザンビディス 1R:12回 2R:11回 3R:6回 計29回
パンチで前に出るハードパンチャーの相手に対し、ヒザを合わせる魔裟斗。ザンビディスはヒザを意識してしまい、一歩が踏み込めずに空振りのパンチが目立った。ヒザでダウンを奪い、魔裟斗の判定勝利だ。
次は新生K-1で活躍する武尊の試合。上下のバランスが取れたコンビネーションで2階級制覇を果たしている。
ハキム・ハメッシュ 1R:5回 2R:5回 3R:9回 計19回
蹴りの数では圧倒的に武尊が上回ったが、パンチでハメッシュからダウンを奪う。ハメッシュもパンチをヒットさせるも決定的なダメージは与えられず。3R後半にはハメッシュの息が上がりパンチにも力が入らず武尊の判定勝利。
最後はパンチのみの攻防が目立った、木村ミノルと平本蓮の試合だ。
平本蓮 1R:5回 2R:2回 3R:0回 計7回
元々パンチ主体の木村ではあるが、上の2試合を見ると蹴りの数が著しく少ないのが分かる。結果としては木村が判定勝利を挙げるものの、K-1の最前線で活躍する選手が、まだ高校生の平本に苦戦するという形になった。ローやミドルを散らしていれば当たるパンチの数も増え、また違う結果になっていたはずだ。
平本に対しても同じことが言える。平本はスピードのある上下のコンビネーションで相手を崩していくのが魅力の選手。しかしパンチで来る木村に対抗し、蹴りを忘れてしまうシーンが多く見られた。
あくまで基本に忠実に
もちろん選手それぞれには個性がある。木村の、ガードの上からでも効かせることができるパンチなどはまさにそうだ。逆にパンチはほとんど出さず、3R中に87回もの蹴りを出すサムゴー・ギャット・モンテープのような選手もいる。
しかし、上下に散らしたコンビネーションがキックボクシングの基本。それに忠実に攻撃を組み立てることが、KOへの近道の1つであることは間違いなさそうだ。
國友ステロイド●文
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