一流アスリートはビタミンをしっかり摂っていた!その理由は?
アスリートは『肉』をよく食べるイメージがあります。
しかし忘れてはならないのがビタミンとミネラル。
今回は管理栄養士の視線からビタミンとミネラルの重要性を検証してみます。
Contents
スポーツ選手に必要なビタミンとミネラル
スポーツ選手の中には「野菜を食べてもパワーが出ない」と言って、ビタミン・ミネラルをサプリメントだけで摂っている人もいます。野菜は草食動物のイメージで、スポーツ選手なら、肉食動物の方がパワー溢れているように見えますね。
「野菜はビタミン、ミネラルが多いから、食べなければダメ!」とよく聞きますが、サプリメントなどで1日分のビタミン・ミネラルが手軽に摂れるような商品もあります。人間ですから、簡単なサプリメントで摂ればいいんじゃないかと楽な方へ流れてしまいがちです。
スポーツ選手として、ビタミン・ミネラルはどのように摂った方がいいのか?栄養士が説明します。
ビタミン・ミネラルとは?
ビタミンは人間が生きていくうえで必要な有機化合物(タンパク質、糖質、脂質以外)のことです。全部で13種あります。ミネラルは無機化合物で16種あります。
ビタミンA、ビタミンB1など一見規則的に見えるビタミンの名前ですが、ビタミンB1やビタミンB2はあってもビタミンB3はありません。
ビタミンの存在が発見され、研究され始めた時、新しいビタミンが見つかると順番にA、B、C…と付けていたのですが、別のものと思ったビタミンが実は同じものだったり、同じだと思ったものが別のものだったり、後から判ってきたため、ビタミンの名前は飛び飛びになっているのです。
ビタミン・ミネラルの体での役割は、「体の調子を整える」ことです。車に例えると、エンジンオイルになります。一見忘れがちですが、とても重要な役割です。
ビタミン・ミネラルの多い食品は、主に野菜、海藻、きのこ、果物などです。これらの食品は、あまり好んで食べない人も多くいます。
好き嫌いもありますので、「ピーマンだけはダメ」という位の人も、「野菜全般食べられない」という極端な野菜嫌いという人も見かけます。
ビタミン・ミネラルは摂らないとどうなる?
ビタミンやミネラルは意識して摂ったことがない人も、不健康な食生活をしている人でも、元気に日々を過ごしています。そう考えれば、意識してビタミンやミネラルを摂る必要がないのでは?と思ってしまいますね。
ビタミンはある程度の量を体に溜めておくことができ、さらに半分程度のビタミンは腸内細菌が合してくれています。なので、意識してビタミンを摂らなくても、現代ではよほどの偏食でなければ健康に影響がありません。ミネラルの必要量はとても微量で、普段の食事をしていれば不足する事はありません。
昔は現代ほど食料が簡単に手に入らなかったり、ビタミンの研究が未発達だったことから、ビタミンB1の不足で起こる「脚気」や、ビタミンCの不足で「壊血病」などの欠乏症がよく起こりました。
食料が豊富な現代ではビタミン・ミネラルの不足は起こらないはずですが、好きな物だけを食べ続けたり、「お腹が膨れれば、出来る限り食費を安くしたい」などの経済的な面もあり、いつの間にか偏食になっていることも少なくありません。そのような場合は、ビタミン・ミネラルの不足が起こります。
一般人でさえ、潜在的なビタミン・ミネラルの不足状態の人が見られますので、ビタミン・ミネラルが多く必要なスポーツ選手となれば、なおさらビタミンやミネラルを意識して摂らないと、パフォーマンスの低下に繋がります。これは、スポーツ選手としては大きな問題です。
スポーツで最も必要なビタミン・ミネラル
どんなビタミン・ミネラルも体にとって必要なのですが、特にスポーツ選手に必要なのがビタミンB1とビタミンCです。
ビタミンB1
ビタミンB1は、先ほど述べた腸内細菌で合成できないビタミンです。なので、食べ物から摂るしか方法がありません。さらに、ビタミンB1はごはんやパンなどの糖質をエネルギーに変える為に必要なビタミンです。
スポーツをすると、エネルギーをたくさん使うのでエネルギー源となる糖質を摂ることはだいぶ広まってきている知識ですね。しかし、このビタミンB1を摂らなければ、糖質は不完全燃焼を起こして完全にエネルギーになりません。
ビタミンB1は、日本人の食事摂取基準において1.1~1.4mg/日程度摂るように推奨されています。水に溶ける水溶性ビタミンのため、上限量は定められていません。
ビタミンC
ビタミンCも腸内細菌で合成できないビタミンです。ビタミンCは強い抗酸化力を持っています。
スポーツをすると、活性酸素という物質が大量に産生されます。活性酸素は体に入ってきた有害物質を退治するために強い力を持っており、体で大量に出来てしまうと、行き場のない活性酸素は体の細胞を攻撃し始めます。なので、必要のない活性酸素はない方がよく、活性酸素を無力化してくれる力が抗酸化力なのです。
抗酸化力を持つものはいくつかありますが、ビタミンCは強い抗酸化力があり、活性酸素を除去するエース的な存在です。ビタミンCは100mg/日程度摂るようにします。
サプリメントでビタミンを摂るのはダメなの?
全てのビタミン・ミネラルは体にとって必要なものですが、これらが多く含まれているのは野菜、海藻、きのこ、果物などです。
しかし、野菜嫌い、きのこ嫌い、果物はあまり食べないなど、なかなか積極的に食べたがらない人も多いですね。
これらを食べない代わりに、サプリメントでビタミ・ミネラルを摂るのはどうなのでしょうか?必要な量が、過不足なく摂れるなら良いと思ってしまいますね。
野菜等の食品から、ビタミン・ミネラルを摂った方が良い理由は大きく2つあります。
ファイトケミカルの摂取が出来る
日本人の食事摂取基準で基準が策定されている栄養素は全部で33あります。その中には、ポリフェノールやイソフラボンなど、どこかで聞いたことのあるような栄養素は入っていません。
それらの栄養素は「ファイトケミカル」と総称し、研究が進んでいる分野です。
自然の食品には、このファイトケミカルが含まれており、人間がまだ知らない栄養素がたくさん潜んでいます。
自然の食品を摂れば、ビタミン・ミネラルだけではなく、このファイトケミカルを摂ることになるのです。これはサプリメントでは得られない効果です。
脂肪などの摂り過ぎを防ぐ事が出来る
もし、ビタミン・ミネラルをサプリメントで摂り、野菜等を全く食べないで、肉や魚やごはんなどだけでお腹いっぱい食べるならば、確実に脂質や糖質は摂り過ぎになります。
適正な脂質と糖質の量で食事を作ったら、とても貧相なボリュームのない食事になってしまうので、野菜や海草やきのこなどの脂質や糖質が少ない食品を入れて、ボリュームアップする必要があるのです。
ビタミンのサプリメントは、野菜等のビタミン・ミネラル豊富な食品を摂った上で、予防的に摂ります。人はどうしても食の好みがあり、食べる野菜等が偏る傾向にあります。
同じ野菜ばかり食べていると、いつの間にか特定のビタミン・ミネラルが不足する可能性があるので、特定のビタミン・ミネラルが不足しないように予防的にサプリメントを摂ると良いでしょう。
おススメのビタミン・ミネラルレシピ
スポーツ選手のおススメのビタミンB1とビタミンCが摂れるメニューです。
☆豚キムチ
材料(1人分)
・豚ロース肉(赤身) 100g
・キムチ 30g
・ピーマン 1個(50g)
・醤油 大さじ1/2
・サラダ油 大さじ1/2
作り方
1、ピーマンは半分に切って種を除き、幅1㎝程度に切ります。
2、キムチはざく切りにします。
3、豚肉は幅2㎝程度に切ります。
4、フライパンにゴマ油を熱し、ピーマンと豚肉を炒めます。
5、キムチを加えて炒め合わせ、醤油で味を調えます。
使用量(g) | たんぱく質(g) | 脂質(g) | 糖質(g) | ビタミンB1(mg) | ビタミンC(mg) | |
---|---|---|---|---|---|---|
豚ロース肉(脂身付き) | 100 | 19.3 | 19.2 | 0.2 | 0.69 | 1 |
キムチ | 30 | 0.8 | 0.1 | 2.4 | 0.03 | 7.2 |
ピーマン | 50 | 0.5 | 0.1 | 2.6 | 0.03 | 39 |
濃口しょうゆ | 9 | 0.7 | 0 | 0.9 | 0.01 | 0 |
サラダ油 | 6 | 0 | 6 | 0 | 0 | 0 |
合計 | 195 | 21.3 | 25.4 | 6.1 | 0.76 | 47.2 |
このメニューで、ビタミンCは1日の必要量の半分になる47.2mg摂れます。ビタミンB1は0.76mgと、1日の必要量の7割程度摂れるメニューです。簡単に出来るので、試してみて下さいね。
三沢奈緒子(管理栄養士)●文
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