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【初の国際・天覧試合】 スコットランド戦・ラグビーの審判たちの戦い

 2016/07/02 ラグビー
 

日本ラグビー協会審判委員長・岸川剛之氏によるラグビーレポート『Together』
第2回目は日本とスコットランドとのテストマッチの模様。
海外からやって来た審判たちの試合に臨むコンディション作り。
そして日本のレフェリーをとりまく環境についてをレポートする。

天覧試合。そしてファン層も広がるラグビー

2016年6月25日に行われた日本代表(世界ランキング11位)と、スコットランド(同8位)とのテストマッチ。第1戦は13-26、

第2戦は16-21と日本代表は惜しくも勝利を逃した。
昨年のワールドカップ(W杯)で唯一敗れた相手。雪辱を果たしたかっただけに残念だったが、2戦目は相手をPGのみのノートライに抑え、以前の日本代表とは明らかに違う姿を、身を持って示してくれたと思う。
2戦目は天皇・皇后両陛下もお見えになられ、初めてラグビーの国際試合を観戦された。訪れた観衆も、国内最多の3万4073人。

客層も以前とは変わり、女性ファンやヤング層も増えてきている。かつてない期待感を感じないではいられない。
今大会は、2019年の日本開催となるW杯に向けて課題も多いが収穫もあった。これを踏み台に、一層のステップアップを望むところだ。

レフェリーたちの戦いとコンディション作り

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今回のテストマッチで来日したレフェリーは、4人。初戦のマッチオフィシャルはSuper RugbyでSunwolves の初戦を担当したBen O’Keeffe(NZ)。アシスタントレフェリーはMarius MITREA、Brendon Pickerill(NZL)でともに初来日だった。TMO(テレビ判定)はIan Smith(ITA)。
2戦目のマッチオフィシャルはMarius MITREA 、アシスタントレフェリーBen O’Keeffe(NZ)、Brendon Pickerill(NZL)、TMO(テレビ判定)がIan Smith(ITA)。
彼らは2週間、日本に滞在し、翌日帰国の途についた。試合を終えたあと、彼らからこんなコメントをもらった。

「試合でのブーイングが厳しかった」(2戦目を担当したMarius)
「駅などゴミが落ちておらず、日本の街並みはとてもきれい」
「食べ物が美味しい!」
「また日本に来たい。2019年ワールドカップも楽しみにしている」(全員)

ところで、私は日本協会で審判委員長をしているが、来日したレフェリーたちにいかにベストコンディションで試合に臨ませるかが、今回一番の仕事だった。
まず、空港で彼らを出迎え、日本に滞在中、その多くの時間を共有した。ホテル内をはじめ生活面で不自由のないように、ホテルの部屋や食事など細かなサポートを行った。

コンディショニングづくりのため、トレーニングジムやプールを手配し、汗を流してもらうようにもした。
京都では、気分転換に観光もしてもらった。回ったのは清水寺、伏見稲荷。西陣織会館で着物を珍しそうに見ていたのが印象的だった。

京都を一望出来る見晴らしの良い将軍塚展望台や先斗町を歩きまわり、日本を堪能できたようだ。京都ならではの食事も味わってもらった。日本のことを理解してもらい、気持ちよく笛を吹いてもらうために、こうした気遣いはいつのときも欠かせない。

19年のW杯では、開催国としていろいろな部分に気を回す必要があると改めて思う。ただ、今回の彼らに関して言えば、普段から個人で行動しているため、あまり手がかかることがなかった。そして、食事などしっかりと自己管理をしているところは、さすがにプロフェッショナルだと感心させられた。

日本のレフェリーは一試合・わずか5千円

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それにしても、思いがけず海外のレフェリーと交流する機会が増えたことで英語を話さなければならなくなり、必然的に語学力が身についてきた・・・・・・と言いたいが、全く上達していない。毎回、悪戦苦闘である。学生時代はサボりばかり。もっと勉強しておけばよかったと、正直後悔ばかりだ。
当時は自分がこのようになるなどとても考えられず、また今の日本ラグビーの奮闘も想像できなかった。毎日ドタバタの連続ながら、人生とはなかなかに面白いとつくづく思う。

なお、6月は世界各国でテストマッチが行われていて、日本のレフェリーもカナダVSロシア戦を久保修平レフェリー、モナコではオリンピック予選・男子セブンズを、大槻卓レフェリー、ダブリンでのオリンピック予選・女子セブンズを、川崎桜子レフェリーが担当した。日本のレフェリー陣が今後世界で一層活躍できるように、その環境整備も私の大きな仕事である。

レフェリーの環境づくりは難しい課題のひとつだ。ラグビーを取り巻く環境がプロ化をしている中で、日本にいるプロレフェリーは2名だけでチームやワールドユニオンが求めることに対応し切れていないことや、レフェリーにスケジュール確保の時間を作らせることが非常に困難という現実がある。

求められていることに対しての対価も、確保できていないと思う。一試合のマッチフィーはわずか5千円。以前に比べて高くはなったが、十分とは当然言えない。

スポーツ基本法が50年ぶりに改正され、2020年東京オリンピックに向けて審判の育成や強化が始まった。こうした現状を受け、微力ではあるがこの機会にコツコツと時間をかけて改善していきたいと思っている。

岸川剛之●文

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岸川剛之

岸川剛之

1964年生まれ、日本大学卒

(公益財団)日本ラグビーフットボール協会・審判委員会委員長

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