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理学療法士をスポーツ界に欠かせない存在にしたい 石井斉

 2017/04/25 ケガと予防法
 

スポーツ選手には必ず必要な人がいる。
コーチが一番に頭に浮かぶ人は多いと思うが怪我をしてしまった場合のトレーナーの存在はとても重要だ。
今回は理学療法士としてスポーツ選手をサポートする石井斉氏を取り上げる。

新聞記事が導いた理学療法士への道

アスリートのリハビリはもちろんのこと、一般人のリハビリなどを手助けする理学療法士。専門性を駆使した治療方針を打ち出すこの職業は、国家資格でもあり、近年はスポーツ界でも注目される職業となっている。

しかし、日本でリハビリテーション科を置いている病院の数はまだまだ多いとは言えない。そんななかで北海道、東京、埼玉などに病院を持つ明日佳グループは、スポーツ整形やリハビリテーションに力を入れている治療施設として注目を集めている。

そのひとつが、東京都世田谷区にある東京明日佳病院だ。

1940年に地域医療への貢献を目的に開院され、現在では内科、外科、脳外科、整形外科など幅広い分野を扱っている。

中でも、スポーツ整形、リハビリテーションの分野は高い評判を得ており、近郊の高校生や中学生ばかりではなく、関東近郊からもケガやリハビリに悩む選手たちが訪れているという。

この病院のリハビリテーション科で、スポーツリハビリ主任として活躍するのが石井斉さんだ。

石井さんが理学療法士という仕事に興味を持ち始めたのは、一度の大学受験失敗がきっかけだったという。

「大学受験に失敗して1年間、浪人生活をしていたんです。もともと小学校の先生になりたいという気持ちはあったのですが、僕自身が野球をやっていたこともあり、スポーツに携われる仕事もいいかと思うようになったんです。大学卒業後はやりたい仕事につきたいという気持ちも強くあり、いろいろと調べていたとき、理学療法士の本を見つけたんです。今から20年くらい前ですから、理学療法士なんて名前は世間でも知っている方は少なかったと思います。でも、僕の中では本を読んでいくと、スポーツ選手にも関われるいい仕事だと思ったんです。」

「決定的だったのは、メジャーリーガーのパイオニアである野茂英雄投手が、理学療法士のおかげで大リーグでも活躍できたという新聞記事を見たときでした。実は、野茂投手がアメリカに渡った際、肩の状態があまりよくなかったそうなんです。それをロサンゼルス・ドジャースの理学療法士でもあるトレーナーが治療して、投げられる状態に戻したという内容でした。その記事は、本当に衝撃的で、もう、この職業しかないなって思いましたね」

一生忘れられない恩師との出会い

理学療法士を目指すようになった石井さんは、ここで恩師ともいうべき人との出会いを果たす。それは、東京明日佳病院の渡邊幹彦院長だ。

東京明日佳病院・渡邊幹彦院長

出典:http://www.asuka-gp.or.jp/tokyoasuka/greeting/index.html

渡邊院長は、香川医科大学卒業後、昭和大学整形外科に入局し活躍。その後、日本鋼管病院スポーツ整形外科部長、昭和大学客員教授などを歴任し、2013年に東京明日佳病院副院長、2015年に院長へ就任した経歴の持ち主だ。

「理学療法士になろうとどの養成校に行けばいいか探っていたとき、渡邊院長が講師を務めていた学校があったんです。その紹介文に専門がスポーツ医学、投球障害肩と書いてあり、“この先生の元で働くしかない”と思いました。そこで、入試の面接のときも、当時の勤務先だった病院の名前を出し『日本鋼管病院で渡邊先生と働きたいです』といいましたからね(笑)。そこから渡邊院長との付き合いは続いてますから、先生の追っかけをしているようなもんですけど。でも、あのとき先生がいる養成校に入れたことが、今の僕の礎になっていることは言うまでもありません」

高齢化社会でもでも貢献できる理学療法士

石井さん自身、高校球児として白球を追いかけていた経験がある。しかし、時代の影響もあり、肩の痛みや捻挫などがあっても、病院へ行ったことはなかったと振り返る。

「高校まで野球をやっていましたが、肩を壊しても腰を痛めても、病院に行くという概念は全くなかったです。子どものとき捻挫して病院へいったとき、放っておけば治るよっていわれたこともあったので、無理をしなければ大丈夫だろうって。しかし、今、理学療法士という仕事について、考え方はガラリと変わりましたね。捻挫をした患者さんがくれば、しっかり2週間固定して、その後にリハビリを開始する。こうのように順序を立てて、復活させるというメニューを組みますから。まあ、時代が違うと言ってしまえばそうかもしれませんが、高校時代に理学療法士の人の意見を聞けていれば、身体の使い方が上手になってたかなって考えたことはありますね」

インターネットが普及し、素人でもいろんな情報を得られるようになった現在。

情報が豊富に得られるため、自分で治そうとする人も多いという。しかし、理学療法士から見れば、自己流が逆に患部を悪化させてしまうことがあるという。

「今でも、インターネットの情報では、捻挫したら固定するという情報は得られると思います。しかし、どれくらい固定すればいいかどんな固定法がいいかなど、詳しく記載されているのはあまりないような気がします。場合によっては骨折をしている恐れもあります。そんなときに、間違った処置をしてしまうと、逆に悪化させてしまうこともあります。捻挫に関しては、1週間くらいは靭帯を緩めないために、しっかりと固定しなければいけません。たかが捻挫と思って、放っておくと、靭帯が緩んでしまい復活したときに、違和感を覚えることもあります。」

「いろんな情報を得るのはいいのですが、自分だけで判断するのではなく、医療機関で専門家に意見を求めてほしい。僕たちはリハビリのプロとして、患者さんがケガをする前のベストな状態に持っていくことを一番に考えていますので。日本では、まだ知名度は低いかもしれませんが、スポーツ界ばかりでなく、高齢化社会の日本だからこそ重要な職業だと思います。捻挫や骨折などはスポーツ選手ばかりが陥るものではありませんから。アスリートはもちろんですが、一般の方も骨折や捻挫などをしたあとに、元のように歩けたり走れたりする状態にするのも僕たちの仕事になりますので」

松野友克●文

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ライター紹介 ライター一覧

松野友克

松野友克

1976年、福島県南相馬市生まれ。
小学生のときは少年野球、中学・高校ではバレーボールに熱中していた。高校時代にスポーツ雑誌の仕事に携わりたいと上京を決意。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、複数の編集プロダクションに勤務したのちフリーランスのライター・編集者として独立した。
多ジャンルの雑誌、ムック本・書籍を制作する中でプロ野球、女子7人制など多くのスポーツ取材を行う。趣味はスポーツ観戦、ゴルフ。

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