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大阪で強豪校を作り上げた履正社高校 野球部 岡田龍生監督

 2017/04/03 高校野球と甲子園
 

2017年春のセンバツ。決勝戦は履正社と大阪桐蔭の「大阪対決」
日本中が大注目の一戦だった。
今回は準優勝に輝いた履正社高校の岡田龍生監督にスポットをあてる。

履正社を率いて30年の岡田監督

1987年の春、岡田監督は履正社赴任を目前に控え、指導予定の野球部をこっそり見に行ったことがある。ネット越しに飛び込んできたのは、ストッキングをはかずユニフォームの上着をダラリと出して、真剣さとはほど遠い部員たちの姿だった。

「この学校で甲子園をめざすの?大丈夫?」

結婚したばかりの妻のひと言に、そのとき岡田監督は「何とかなるやろ」と苦笑いするしかなかった。

当時こんな感じだった履正社の野球部は、今や大阪を代表する強豪私学の一角をなすまでになった。3年前の2014年センバツで準優勝。

そして迎えた2017年センバツは、春夏通算10回目の甲子園で同じ大阪の大阪桐蔭と決勝戦を戦い、決勝に進出。敗れはしたが、再び準優勝の栄冠を手にした。

岡田監督の母校・日体大のOBをはじめ、関係者からの優勝を期待する声の大きさを思うと惜しまれる敗戦かもしれないが、それでも秋・神宮大会の覇者として堂々の戦いぶり。主戦投手、主砲の存在感といい、インパクトは大阪桐蔭にまったく引けを取らなかった。

かつてを少し振り返ろう。

1997年の初出場、二度目の2006年春はいずれも初戦敗退だった。大阪代表になれても甲子園では「出ると負け」の履正社なのかと、当時は悩ましく思ったという。

そんなとき、「俺は6回連続初戦敗退。また負けに来たんかとファンに言われて奮起したんや」と励ましてくれたのが、智弁和歌山の高嶋仁監督だった。

周知のとおり、高嶋監督は奈良の智弁学園、そして今は智弁和歌山を率いる名将だ。

「あの高嶋さんでも、最初は勝てなかったのかと。甲子園とはそういうところ。甘くはないんだと思い直しましたね。1勝を目指した3回目の2008年は、初戦で9回に2本の本塁打で同点にされダメかと一時はがっくりしましたが、最終的に延長で勝利。勝つと負けるのではこんなにも違うのかと、1勝の重みを感じたものです」

モットーは『つなぐ野球』その原点は練習環境

岡田監督がこだわっているのは「つなぐ野球」だ。大型チームになった今でも、それが根底にあるという。

バントと走塁でチャンスを確実につくる。大阪大会を勝ち抜くためには最低でも7試合、多ければ8試合を戦わなければならない。

打撃は水物と言われるうえに、最後は連戦による疲労との戦いもあって、強打を誇るチームでも思ったとおりに事を運ぶのは難しい。

「でもバントと走塁にスランプはない。チームの特性を見ながらですが、単純に確率論で有利な方を選ぶということです。もちろん、打って打って打ちまくれる力があればそれに越したことはないですけどね」

赴任前、妻と足を運んでネット越しに見たあの校庭は、現在では人工芝が敷き詰められてとてもきれいだ。

しかしながら、住宅地ゆえ広さはなく、かつてはここで野球部のほか幾つものの運動部が入り交じるように練習していた。

野球部が全面使える日は週に2日ほど。残りの日は、他の部が練習を終えていなくなるまで待つしかなかった。

「思い切ってバットを振るなどできないから、やれるのは内野守備とバント練習くらい。初心者クラスの選手では打撃練習をしたところでそうは打てるようにはなりません。

ならバント練習だけでも確実にしていこうと。スタートがそういう状況だったので、考え方としてはその延長線上で今に至っています」

藤井利香●文

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ライター紹介 ライター一覧

藤井利香

藤井利香

東京都生まれ。日本大学卒。
高校時代は(弱小)ソフトボール部の主将・投手・4番として活躍。大学では、体育会ラグビー部の紅一点マネージャー。関東大学リーグ戦グループ・学生連盟の役員としても活動。
卒業後は商社に勤務するも、スポーツとのかかわりが捨てがたく、ラグビー月刊誌の編集に転職。5年の勤務のあと、フリーライターとして独立。高校野球を皮切りに、プロ野球、ラグビー、バレーボールなどのスポーツ取材を長く行う。現在は、スポーツのほかに人物インタビューを得意とし、また以前から興味のあった福祉関係の取材等も行っている。

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