甲子園で優勝に導いた大阪桐蔭高校 野球部 西谷浩一監督
2017年。そして2018年・春のセンバツ。
頂点に立ったのは大阪桐蔭だった。
今回は優勝校を率いた西谷監督の子ども達に対する考え方、教育について焦点をあてる。
新入部員は少人数に
西谷監督は、高校3年間で、野球に対する考え方が決まると考えている。
責任の重大さを人一倍感じ、やり残したことがないと断言できるくらいに納得がいくまで指導にあたる。
OBという最高の見本のほかに、時間を作っては本物を見せたいと、社会人野球の日本選手権などに選手を連れて行くことも度々ある。
そして、進路を決め一人ひとりをきちんと面倒を見たいからと、新入部員も毎年17~18人と決めている。
「人数が増えれば補欠が増える。練習も満足にさせられない。でも今の人数であれば1年生からどんどん練習できるし、この時期なら紅白戦にも全員使ってやれる。チャンスをもらえないまま補欠で終わるのでは不満が残るが、これならどの選手もある程度納得がいくでしょう。僕は何より、桐蔭に来てよかったと全員に思わせたい。今年のように結果が出ればもちろんいいけれど、甲子園に行けなくても、ここ桐蔭でよかったとはっきり言えるような、そんな3年間にしたいんです」
西谷監督が報徳学園の1年生だったとき、当初1年生だけで76人いたそうだ。時代に流れで今や少人数制をとる学校が増えているが、そう考えると今の子どもは環境的にとても恵まれ、幸せである。
選手は家族
「要は空気。思うような成績が残せなくても、そこで踏んばって頑張れるような空気をいかにしてつくるか。中田などは、みんなが見ている前では絶対に練習しませんでした。やるのは夜中、みんなが寝てから。もちろんみんな気づいているんですが、それぞれが誰かに言われなくてもとことん取り組めるような、そんな空気を今しっかりと確立していきたいと思っています」
「時代が急速に変わり価値観も多様になった。難しいなと思うことがたくさんあります。そんな中、今も昔も変わらないのが、高校球児の甲子園に対する思いです。僕はそれが100年後も200年後も同じであってほしいと思うから、指導者としてできる限りのことをやっていきたい。それに、フルに動いていないとさぼったような気になりますしね(笑)」
大阪桐蔭の野球部は皆、寮に入って生活をしている。西谷監督にとっては24時間気が抜けないが、寮をなくそうと考えたことは一度もない。
「寮があれば、家族になれます。記者の多くがうちのアットホームな雰囲気に驚くけれど、それは3年間片時も離れない、家族だからです」
今では雑用なども上級生が進んで動く空気が出来上がり、下級生ものびのびプレーできる環境になっている。そんな中で、西谷監督を中心に固い絆で結ばれた家族が、時を重ねるごとに増えていく。
さて、2017年春、センバツを制したチームの背番号1・徳山壮磨投手は、藤浪晋太郎投手(阪神)にあこがれて入学した選手。
2年前のエースから去年のエースへ、さらに自分へと受け継がれたメッセージ入りのボールを宝物に、奮闘したという。他のメンバーも、スタンドでの応援に回った他の部員も含め、43人全員で戦ったと胸を張る。
レギュラー陣に2年生が多く、「発展途上」と西谷監督は言うが、夏の大阪府決戦に向けてどこまでチームを進化させるか。履正社との対決が実現したら、それはまさに甲子園大会以上のしびれる戦いになるに違いない。
藤井利香●文
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