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石巻工業(宮城県)松本嘉次監督 2 ~選手たちの能力を最大限に伸ばす戦略~

 2016/04/25 高校野球と甲子園
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2012年春のセンバツに出場し大きな声援をうけた石巻工業。
松本嘉次監督は選手たちに甲子園での体験を伝える伝道師になれと言った。
今回は松本監督の選手たちへの指導法について聞いてみた。

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石巻工業・松本嘉次監督 前編はこちら

野球未経験者の松本監督はルールブックの熟読から猛勉強

松本監督は学生時代、兄弟4人の末っ子ゆえに、お金のかかる野球を諦めバスケットボールを選んだ。
つまり野球経験はないのだが、気仙沼向洋高に赴任して野球部にかかわるようになってからは、自分でも驚くほど野球にハマっていった。

それは、初めてベンチに入った公式戦での勝利がきっかけだった。

「部員70人くらいしかいないチームに14人しかいないうちが勝っちゃたんです。
なんじゃこりゃ。すげ~って思った。
野球って弱くても勝てたりするし、バスケットはゴールは1つだけど、野球は狙いどころが90度広がっているのも面白い。いつしか自分が野球の追っかけになってました」

野球部長になって、すぐにトライしたのがルールブックの熟読だ。
ルールに精通した人間がいたなら、それはチームにとって強みになる。
記録の書き方もマスターした。
野球に長年親しんできても、ルールブックにきちんと目を通している人は思いのほか少ないのが現実だ。

「その後の試合では、俺が記録係に入ると審判団がみんな嫌がって。細かいところに目をつけるから。それに、責任教師としてベンチに座っているだけではつまらない。監督や選手とは違った目線で野球を見て、極端に言えば打球なんてほとんど見ていない。観客のひとりとして野球に関わっていたね。すべては今までの監督さんに、感謝だなぁ」

選手を野球に夢中にさせる松本野球

参謀役に徹底した。部長のイスは空きがちで、なり手がないと言われる高校野球界。
でも松本監督は、このポジションに満足していた。
のちに監督になったのは、やれる人がいなくなったためで本意ではない。
しかし、部長時代の蓄積が、結果的に試合で見せる思いきりのいい野球につながった。

例えば、試合中にサインを出すのはごく限られた場面だけ。
甲子園でも8回に先頭打者を出したとき、4点ビハインドであれば普通ランナーをためていくが、選んだのは盗塁だった。

「テレビの解説で、走った~、あれはたぶん自分で行ったんでしょうねって言ってるんだけど、違う、俺が出したサイン。やるべきことは選手が自然にやってくれるから、ここは違うことをするよっていうときだけ出す。それも野球経験者にとっては、それはないでしょうと思うようなサイン。これが実に楽しくてたまらない(笑)」

もともと型にはまるのが嫌い。
学生時代から発想がユニークで、高校時代に書いた読書感想文は課題図書から選ばずに、
「こんなにいろいろ教えてくれるのにもったいない」と『国語辞典』を選び、番外賞をもらった。
プロ野球は阪神タイガースの熱狂的なファンで
「勝つか負けるかどっちかだという戦い方が最高だべ~」。

こんな調子だから県内では、もっとも戦いたくない相手と言われているらしい。
「何かしてくると思うんだろうね。でも実際はサインも出さず、ほとんど何もしていない!」

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松本嘉次監督の野球観

1試合7~8つの盗塁も、その多くはノーサインだ。
ただ、それには子どもの気質を見抜いた松本監督なりの考えがある。
「嫌な仕事を頼まれると同じで、サインを出すと硬くなる。
走ろうと自ら思っていれば間違いなく成功します。
いつもあいつらが勝手にやっていて、そのたんびにすんげ~なって褒めてやるんです。
だから、ますます面白いことをしてくれる。
しなければならない、Mustが多くなったら、子どもは絶対小さくなります」

また、守備については、こんなコメント。
「グラブの出し方をいろいろ言うけど、前に落としてもすぐに投げればアウトになる。どんな捕り方をしてもいいと思う。グラブの側面で捕ってもアウトはアウト。甲子園に行った連中は公式戦でのエラーが1試合に1個だったけど、実際にちゃんとキャッチして一塁に投げたかっていうとそうじゃない。ポロっとやりかけては、うわ~って慌てて投げてたよ。要は点を入れさせなければいいわけで、それを野球経験のある人はなかなかOKとは思えないみたいだけどね」

グラブの縁で捕ろうと、下手くそだなんて思わない。
大事なのは、最後まで全力でアウトを取りにいくこと。
野球に対する考え方は、こうしてとことん柔軟だ。
だからこそ、普通の子どもたちがぐんぐんと伸びていく。

「バッティングも、最初からあいつら打たね~もんだ、やらね~もんだと思っているから、
いざ打ったときは凄くうれしい。そうしたら、一緒に楽しめるじゃないですか。
監督が喜ぶとあいつらも喜ぶ。すると、ますますノッてくる(笑)」

〝できない〟が続けば選手の士気も下がりがちだが、
反対に〝できた〟が増えれば、野球にもっと夢中になれる。

これは野球だけに限ったことではなく、生きるうえでの必需品でもあるだろう。

その後松本監督は、石巻工業から仙台市内にある仙台工業高校へ異動となった。
監督という肩書はもうないが、宮城県高野連に籍をおき地元高校野球のために尽力する日々だ。

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ライター紹介 ライター一覧

藤井利香

藤井利香

東京都生まれ。日本大学卒。

高校時代は(弱小)ソフトボール部の主将・投手・4番として活躍。大学では、体育会ラグビー部の紅一点マネージャー。関東大学リーグ戦グループ・学生連盟の役員としても活動。

卒業後は商社に勤務するも、スポーツとのかかわりが捨てがたく、ラグビー月刊誌の編集に転職。5年の勤務のあと、フリーライターとして独立。高校野球を皮切りに、プロ野球、ラグビー、バレーボールなどのスポーツ取材を長く行う。現在は、スポーツのほかに人物インタビューを得意とし、また以前から興味のあった福祉関係の取材等も行っている。


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