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大阪で強豪校を作り上げた大阪桐蔭高校 野球部 西谷浩一監督

 2017/04/10 高校野球と甲子園
 

2017年・春のセンバツ。大阪桐蔭が優勝旗を手にした。
チームを率いた西谷浩一監督に焦点をあててみる。

2017年春のセンバツ・優勝

史上初となった「大阪対決」。今春のセンバツを制したのは、大阪桐蔭だった(5年ぶり2度目)。

中学時代にトップクラスだった選手が集まるエリートチームだが、個々が優れていてもそう簡単に勝てるものではない。

常に高みをめざし、一人ひとりが努力を惜しまない姿勢。さらには仲間を信じ、一丸となって戦う。きめ細やかな技術指導とともに、チームを預かる指導者の、こうした選手に対する心の教育も行き届いているからだと感じている。

大きな巨体が二度、三度と宙に舞い、100キロを超えるというその体重を選手たちがよくも支えたものだが、率いる西谷浩一監督は平成5年に大阪桐蔭のコーチとして指導者生活をスタートさせた。

それから5年後の29歳で、監督に。短期間、2度ほど監督を退いた時期があったが、常に日本一を目標にチームをつくり続けてきた。

選手との対話を重視した西谷監督

平成20年夏には春夏通算5回目の優勝を飾ったが、そのときのことを振り返り、当時こんなことを言っていた。

「このままではダメだと選手に問いかけたあと、彼らは本気で日本一の狙いたいと言ってきて、それからは年間を通して休みがあったのかと思うほど猛練習をしました。彼らに求めるだけでなく、私もこれまでとは違った自分を求め、本来ならば1年生の担任になるところを3年生のクラスを持ちたいと、無理を承知で校長先生に願い出ました。それくらい、本気になった1年でした」

選手との対話も、いつも以上に増やした。野球ノートに書かれたひと言に対し細かなアドバイスを送り、全員に対する面談の時間も定期的に作った。

1人10分の予定がいつの間にか1時間。もともと話し好きではあるが、「次のやつが隣の部屋でいつも待ちぼうけを食らってた(笑)」と言うほど熱が入ったという。

「桐蔭のイメージというと、過去の辻内(崇伸=元巨人)や平田(良介=中日)中田(翔=日本ハム)に代表されるような突出した選手がいて、彼らにばかりストレスがかかる。全員野球というよりは、個々の力で勝つチームととらえられていたと思うんですが、そうじゃないんです。いつの時も、全員一丸となって戦う。優勝したメンバーも、1つ上の代がいかにまとまりのあるいいチームだったかをよく知っています」

モットーは『一球同心』心をひとつに

西谷監督がチーム作りを続けている中で、いい流れができてきたと感じさせた年が平成13年である。

顔ぶれは、3年生に中村剛也(西武)、岩田稔(阪神)らで、唯一の2年生が西岡剛(ロッテ~ツインズ~阪神)だった。

中村らは、西谷監督が監督として初めて1年生から指導した選手たちで、単に野球がうまいというだけではなく、練習に対する取り組み方など人間的に高く評価できるチームだった。

だが、甲子園へは夏の予選決勝に進みながらも延長の末敗れてあと一歩届かず、結果を出せなかったことは大きな悔いとなって忘れることはないという。

「強く印象に残る代で、うちの場合、夏のメンバー発表が終わったらそれ以外の3年生は寮を出るのが前々からのしきたりでした。ところが、主将の乙須正太が僕のところに来て、メンバーが決まったあとも全員を寮に残して欲しいと言ってきた。なぜかと聞いたら、いつも部のモットーで“一球同心”(一球のボールに全員が心をひとつにしよう)と言っているのに、それでは気持ちが離れてしまう。グラウンドで溝ができるし、たとえメンバーから外れてもきっと最後までみんなと一緒にいたいはずだと。僕はそれを聞いて、本当にうれしかった。いいチームができたなと、心から思いました」

藤井利香●文

つづく

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ライター紹介 ライター一覧

藤井利香

藤井利香

東京都生まれ。日本大学卒。
高校時代は(弱小)ソフトボール部の主将・投手・4番として活躍。大学では、体育会ラグビー部の紅一点マネージャー。関東大学リーグ戦グループ・学生連盟の役員としても活動。
卒業後は商社に勤務するも、スポーツとのかかわりが捨てがたく、ラグビー月刊誌の編集に転職。5年の勤務のあと、フリーライターとして独立。高校野球を皮切りに、プロ野球、ラグビー、バレーボールなどのスポーツ取材を長く行う。現在は、スポーツのほかに人物インタビューを得意とし、また以前から興味のあった福祉関係の取材等も行っている。

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