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T-岡田・山田哲人を育てた 履正社・野球部 岡田龍生監督

 2017/04/04 高校野球と甲子園
 

「つなぐ野球」がモットーの履正社高校の岡田龍生監督。
そのルーツと指導方法について焦点をあててみたい。

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岡田監督のルーツ・東洋大姫路でのスパルタと日体大での自主性

岡田監督の母校は兵庫の強豪・東洋大姫路だ。指揮官は、ファンならご存知の梅谷馨監督。

スパルタ式の指導といい、また胃の痛くなるような選手間の上下関係といい、このころの野球部は、今では想像もつかないようなまさに理不尽の連続だった。

当時の強豪校は鉄拳制裁ありの有無をもいわさぬ指導が大方だった。しかしその後進学した日体大の野球部で、岡田監督は思わぬことに気づかされる。

部員数が400人前後という桁違いの規模の中で、ぽつぽつと自主練習を行う選手がいたのだ。

「最初、わからんかったんです。監督から言われるがままで、自主練なんてそれまで考えもしなかったから何をしているのかと驚きました。このとき初めて、自分からやれる選手をつくらないかんのだと気づいたんです。それを頭に入れて指導者になったつもりでしたが、あまりにも弱かったので猛練習を課し、結局、自分の高校時代と同じことをやってしまいました」

叱っても褒めることなどない。当初は選手との会話もなく、いわゆる一方通行に終始していた。

そんな岡田監督だったが、オリックスのT-岡田が在籍していたころには積極的に選手と会話をするようになっていた。

T-岡田の指導をきっかけに会話を重視するように

T-岡田こと岡田貴弘は、入学時点ですでに体重が106キロあった。その巨体から放たれる会心の一打は誰もが度肝を抜くほどの迫力があり、豊かな素質に将来大物の予感を抱かせた。

その一方で岡田監督が惚れ込んだのは、彼のもっていた素直な性格。のんびりペースで争いごととは無縁のまれに見る好青年だった。

「あいつは誰に対しても態度を変えることがない。勉強も一生懸命で、どの先生も感心していた。そんな男が将来プロに行きたいと言うんだが、打つことしか頭になくて、走る、守るはまったく二の次。これでは通用しないと思ったので、プロを目指すならどうあるべきかをいろいろ話してやったんです。そうしたら俄然やる気になって、最後はノーサインで走るほどになっていました。その子に吸収力さえあればどんどん伸びる。確信しました」

人を信じ過ぎる優しい性格ゆえに、社会とはいかなるところかも折々に話した。家庭教育がしっかりしていたことも大きかったが、岡田は監督の話すすべてにじっくりと耳を傾け、食事コントロールが必要と聞けば「大好きなマヨネーズはやめられない!」と言うので、カロリーオフのものに変えるなど、どんな小さなことにも努力を惜しまなかったという。

選手・親との個別面談

これが転機となって、その後、岡田監督が始めたのが個別の面談である。

オフに入った12月に行い、本人と保護者が別々に面談する。日ごろ選手達がつけている野球ノートの内容と現実とのバランスはどうなのか?などを具体的に話し、保護者からは自宅での様子を聞き取って、ひと冬越して成長するための材料にしていく。進路についても、このときじっくり話し合うことにした。

「うちは寮がありませんから、親御さんの協力は不可欠です。過保護になっては困るが、関われるならどんどん関わってほしいと言っています。こちらの考えを理解してくれる親御さんが多ければ多いほどその学年は力をつけ、親のまとまりと子どもの実績は間違いなく相関関係がありますね。子どもに対しても、置かれている現状を正しく伝えてやりながら練習に向かわせることが大切だと思っています」

2011年春、ヤクルトに入団した山田哲人も、この面談のあとに急成長した。プロに行けるとは到底思えなかった男が、年が明けてから目の色が変わり、夏までに一気に駆け上がっていった。

実際にプロで活躍しているOBたちの生の声も耳に届き、それも大きな刺激となっていった。

藤井利香●文
tsubasa Bs●写真

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ライター紹介 ライター一覧

藤井利香

藤井利香

東京都生まれ。日本大学卒。
高校時代は(弱小)ソフトボール部の主将・投手・4番として活躍。大学では、体育会ラグビー部の紅一点マネージャー。関東大学リーグ戦グループ・学生連盟の役員としても活動。
卒業後は商社に勤務するも、スポーツとのかかわりが捨てがたく、ラグビー月刊誌の編集に転職。5年の勤務のあと、フリーライターとして独立。高校野球を皮切りに、プロ野球、ラグビー、バレーボールなどのスポーツ取材を長く行う。現在は、スポーツのほかに人物インタビューを得意とし、また以前から興味のあった福祉関係の取材等も行っている。

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