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日本VSオマーン戦・100%PK

 2019/01/16 サッカー
 

100%PK

前半26分。オマーンのペナルティーエリア内で南野拓実が右足でシュートしたボールは、オマーンGKアル・ルシェイディにセーブされた後、北川航也の左足に当たりこぼれた。

それをペナルティーエリアの外から走ってきた原口元気がエリアに入って右足裏でコントロールしようとしたが、うまくいかず。

一方、オマーンのDF、ラエド・サレハはボールをクリアしようとしたがこれもうまくいかず。

結果ボールが原口に当たり、原口が転倒した。

映像を見る限り、サハレの振った右足は、原口に接触はしていない。

主審は、マレーシアのアミリル・イズワン・ヤコブ(32歳)。ACLも吹く、アジアでトップの中堅どころのレフェリーだ。

エリアに2mほど入ったところで、この転倒を横から良い位置にいて監視し、サレハが原口を蹴ったと判定、日本にPKを与えた。

すぐさま、オマーンの選手の抗議。キャプテンのアル・マハイジリには、異議でイエローカードが示された。

同じく前半の45分。今度は、日本のペナルティーエリア内。

遠藤航が頭で小さくクリアしたボールをオマーンのハヤエイが右足でシュート。ブロックしようと体を投げ出しながらも、伸ばした長友祐都の左腕にボールは当たり、ゴールラインを割ることになる。

主審はボールが長友に当たったことを認知しているので、判定はコーナーキックに。

長友も「腕に当たった。VARがあったらハンドになっていた可能性が高い」と言っていたとも報じられている。

思い出されるのが2018FIFAワールドカップロシア大会決勝、前半38分のPKにつながるクロアチア、ペリシッチのハンドだ。

これがハンドであれば、長友のケース、ハンドで罰せられるのは、致し方ない。

シュートされたときのボールと長友の距離は約3m。近いっちゃ近いが、長友はシュートを予測し体を反転、意識するしないにかかわらず、当たるかもしれないということで、左腕を上げている。

未必の故意だ(腕を上げればボールが当たるかもしれない。そして、ボールの進行を止められる。それにもかかわらず腕を上げるという故意があり、結果当たっている)。

オマーンの監督は、大宮アルディージャなどで監督を行っていたピム・ファーベック。「100%PKだったと思う」と、話したと聞いた。

今年(2019年)3月2日に、サッカーの競技規則改正に関し、国際サッカー評議会(IFAB)の年次総会が開かれる。

ハンドの反則の解釈が議論され、何らかの指針が示されるようだ。

どのように示さるかは興味深いところだが、長友のケースは今後もハンドの反則に解釈されることと考える。

 1月13日(日)にUAEで行われたアジアカップ1次リーグF組、日本VSオマーン戦は、これら2つのPKがらみの判定で世の中を騒がすことになった。

そして、主審にもたされたこの2つの判定ミスで日本に勝利したことで、“日本はずるい”といった話をする輩もいる。残念なことだ。

アミリル主審。確かにアジアカップに呼ばれたる経験あるレフェリーではある。

この試合もその片鱗を見せ、自分の判定に絶対の自信を見せ、選手の抗議やプレッシャーにも全く動じない毅然さを醸し出していた。

しかしながら、判定はどうだったのだろう。

この試合の直接FK数は、34(日本17、オマーン17)。2018年J1リーグでも直接FK数は、平均25.5/試合。見ていて、“細かく取るな。安全運転だ”と感じていた。

これでは、普段、UEFAのリーグのみならずJリーグで試合をしている選手は、戸惑うかもしれない。

かつ、これかのPKにかかわる重要な判定に疑問があると、レフェリングの基本のきである“判定(Decision)”の部分で信頼を失うことになる。

加えて、不思議だったのは、追加副審の判断だ。

準々決勝からはVARが導入されるが、それまでの試合では、主審の判定を援助したり、選手が反則をすることを抑止する役割をもって、ゴールラインのところに位置している。

少なくてもこれらPKがらみの事象には、主審と何らかのコミュニケーションを取っているに違いない。

それぞれ、2人共、PK、あるいはPKでないと判断したのか。あるいは、良く見えなかったのだろうか? 

長友のハンド疑惑では、アミリル主審はボールからやや遠いところにいたので、援助が必要である。

この試合、日本とオマーンのボールポセッション(支配率)は、60%と40%。

シュート数は、12と8(うち枠内は、7と0)。

コーナーキック、8と4。仮に原口のPKが無くても、長友のハンドがPKになったとしても、何らかの形で勝利、悪くても引き分けになり、決勝トーナメントに進出を決めたと想定される。また、そう思いたい。

初戦のトルクメニスタン戦に比べれば、守備も安定した感もあった。しかし、攻撃ではうまさを感じられたものの、怖さを感じなかった。
17日のウズベキスタン戦、そしてそれ以降、盤石な日本代表の戦いぶりを見せてもらいたいものである。

確かに、運も実力のうちである。しかし、判定ミスでの勝利は、判定ミスでの敗戦があり得ることも意味している。

松崎康弘●文

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ライター紹介 ライター一覧

松崎康弘

松崎康弘

JFA参与・元(公財)日本サッカー協会常務理事。元審判委員長
1954年1月20日生まれ、千葉県千葉市出身。

82年28歳でサッカー4級審判員登録。90年から92年、英国勤務。現地で審判活動に従事し、92年にイングランドの1級審判員の資格を取得。
帰国後の93年1月に日本サッカー協会の1級審判員登録。95年から02年までJリーグ1部の主審として活動し、95年から99年までは国際副審も務めた。
著書に「審判目線・面白くてクセになるサッカー観戦術」「サッカーを100倍楽しむための審判入門」「ポジティブ・レフェリング」などがある。

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