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日本柔道復活の影に筋トレあり!宮本直哉

 2017/09/02 筋肉トレーニング
 

ボディービルダー式の筋トレが金メダル選手を誕生させた

日本人選手が過去最多のメダル数を記録した昨年のリオデジャネイロオリンピック。中でも、2012年のロンドンオリンピックで史上初めて金メダル「ゼロ」という屈辱を味わった日本男子柔道の復活劇を覚えている人も多いはずだ。

日本のお家芸と言われる柔道だが、今では世界の約200の国と地域が国際柔道連盟に加盟しているなど、競技人口も多いスポーツとなった。

さまざまなルール変更も行われ、世界大会では日本の伝統である“1本を取る柔道”より“ポイントを取って勝つ柔道”が主流となっていた。そのため体格で上回る外国人選手のパワーに屈して、日本人選手が敗れてしまうというケースを目にすることも多くなった。

今の柔道界は、技術だけで世界一になれるという環境ではなくなっている。そこに全日本男子柔道監督の井上康生は着目し、練習メニューに筋トレを取り入れるようにしたとういう。

 “自称・筋肉伝道師”宮本直哉氏は、これが柔道ニッポン復活のきっかけになったと語った。

「日本人は、どんなスポーツでも技術力には長けています。長年、日本人選手が世界のトップで活躍している柔道も同様です。“柔よく剛を制す”という言葉もあるようにパワーで上回る相手を技術力で倒してきたわけです。でも、1本を狙うのではなくポイントを多く奪って勝つことにシフトした外国人選手が多くなり、技術力が発揮できないことが多くなりました。結果、ロンドンオリンピックの金メダル“ゼロ”ということにつながってしまった。“今までと同じことをやっていても勝てない”。どん底からの立て直しを任された井上監督はこう思ったはず。だから、常識にとらわれない練習を取り入れたんだと思います」

 確かに、井上監督は、ブラジリアン柔術や沖縄角力(ずもう)、レスリングなど異なる競技の練習を取り入れた。そのひとつに、肉体改造も含まれていのだ。

「体格で上回る外国人選手のパワーには、パワーで対抗する必要があります。もともと技術力はありますのでパワーが加われば、自ずとレベルが上がります。そのために、現役ボディービルダーの岡田隆先生にコーチを依頼したのでしょう。」

「後に岡田先生の本を拝読し知ったのですが、コーチ就任時、まずは背筋を中心にハムストリング、大臀筋などを鍛えるバーベルでデットリフトをさせたそうです。すぐに筋力の弱さを痛感し、唖然とし、一から体づくりをしなければいけないと、ボディービルダーのような筋力トレーニングをみっちりと行ったそうです。その甲斐あって、外国人に負けないパワーがついて、全階級でメダル獲得ということに繋がったんじゃないかと思います。
特に金メダルを獲得した大野将平選手は、理想的な筋肉のつき方をしています。脂肪と筋肉のバランスがしっかりとれたあの体は、筋トレなくしてはできないものです。」

技術力にパワーが加われば日本人も100m・9秒台も可能に

 リオデジャネイロオリンピックでは、陸上男子4✕400mリレーで日本チームは、史上初の銀メダルを獲得した。100mを9秒台で走る選手がいる強豪を凌いだのは、技術力が問われるパトンパスの精度の高さが影響していると注目された。バトンパスのときのスピードを落とさないように練習を積み重ね、悲願を達成したわけだ。

 しかし個人で争う男子100mの結果をみると、オリンピックや世界陸上で決勝戦に勝ち進んだことのある日本人は、1932年のロサンゼルスオリンピックで6位入賞を果たした故・吉岡隆徳、ただ1人だけなのだ。その背景には、日本人が欧米人に比べて筋力が少ないという理由があると宮本氏は言う。

「前にも話しましたが、オリンピックや世界陸上で100mのファイナリストになる選手の平均体重は80kg以上。みんなムキムキな体をしていますよね。先日の世界陸上では敗れてしまったウサイン・ボルトだって90kg以上の体格ですよね。そんな体形の人が、9秒58という世界記録を出すんですよ。パワーとスピードを兼ね備えた選手と渡り合うには、瞬発力を発揮できる筋力トレーニングを積んで、欧米人に負けない体づくりが必要不可欠です。」

 2017年の世界陸上に出場したケンブリッジ飛鳥と多田修平、日本歴代2位の記録を持つ桐生祥秀は、追い風参考ながら9秒台を出した経験がある。また、2017年の日本選手権を制したサニブラウン・アブデルハキーム、リオデジャネイロオリンピックのリレーメンバーだった山縣亮太など、ファイナリストになれる選手が育っているのも確かだ。しかし、彼らの体重を見れば平均が70kg前半。つまり、もっと筋力アップに力をいれてもいいということなのだろうか。

 「確かに、日本の陸上界にもファイナリストになれる選手は出てきていると思います。スタートダッシュが得意な選手もいますからね。あとは、柔道の日本代表選手のように技術力とパワーを兼ね備えた体を作ることじゃないでしょうか。私が言わなくても、当然やっていると思いますが・・・(笑)」

練習だけではダメ。本番で発揮できる筋力づくりが大事

 世界のトップ選手の活躍もあり、日本でも選手の育成には筋力トレーニングは欠かせないものという考えになりつつある。しかし、やり方を間違えれば、意味がなくなる。だからこそ、宮本氏は正しい筋力トレーニングを伝えたいと意気込む。

「レスリングに打ち込んでいた高校時代は、理不尽なことが多かったように思います。猛練習しているのに、試合でその力が発揮できないこともありました。その経験を踏まえて、試合で、ここ一番でいかに力を発揮できるかをすごく考えます。現在、指導する際は、筋トレで鍛えたパワーが試合で発揮できるようなプログラムを組みます。選手たちに、コンディショニングを含め、色々と意識して欲しいからに他なりません。」

 ただ、やみくもに筋力トレーニングをやっても意味がない。いかに集中して筋肉や骨に刺激を与えるのか。今日は何キロを何回上げよう、今日はここを意識して行おう……。ひとつひとつの意識が本番で役立つ筋力に繋がる。この意識は、彼が教えている生徒たちに浸透し、結果としても表れているのだ。

つづく

松野友克●文

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ライター紹介 ライター一覧

松野友克

松野友克

1976年、福島県南相馬市生まれ。
小学生のときは少年野球、中学・高校ではバレーボールに熱中していた。高校時代にスポーツ雑誌の仕事に携わりたいと上京を決意。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、複数の編集プロダクションに勤務したのちフリーランスのライター・編集者として独立した。
多ジャンルの雑誌、ムック本・書籍を制作する中でプロ野球、女子7人制など多くのスポーツ取材を行う。趣味はスポーツ観戦、ゴルフ。

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