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日本VSウズベキスタン・100%フェア

 2019/01/20 サッカー
 

アジアカップ2019・Fグループ、日本VSウズベキスタン。

ひとつ前のオマーン戦(1-0で勝利)から北川航也を除く先発10人を入れ替えて臨み、2-1の勝利。グループ1位抜けを果たした。

1-1で迎えた後半の12分、伊東純也が右サイドからグランダーのクロス。ウズベキスタンイスロム・トゥフタフジャエフがコーナーキックに逃げた。

そのまま伊東純也が右側からコーナーキックを行い、エルドル・ショムロドフがペナルティーエリア外に大きくクリアした。

そのボールを拾った室屋 成がクロスを上げ、三浦玄太がヘッド。
イスロム・トゥフタフジャエフの足に当たり、その後、エゴール・クリメツがクリアしたが、小さく、ボールは塩谷 司の目の間に転がる。
ペナルティーエリアのアークから約2mのところで塩谷が左足のややアウトでシュート。

GKイグナティ・ネステロフは、目の前のDFイスロム・トゥフタフジャエフに視野を遮られて反応が遅れ、ボールは向かって左のゴールに突き刺さる。

日本勝利を導く決勝点である。素晴らしい!!

得点後、三浦など多くの選手が飛んできて塩谷のゴールを祝福。とても美しい光景だ。

しかし、そこにイスロム・トゥフタフジャエフやエゴール・クリメツがやってきて、何やらジェスチャーで文句を言う。
一発触発といった感じではないが、ややヒートアップ。テンションも上がった。

ウズベキスタンの選手たちは、塩谷がシュートを放ったとき、ゴール横に頭を押さえて倒れているムサエフを指し、負傷者がいるのでプレーを停止すべきだったと言っているようだ。

翌朝、幾つかインターネット上のニュースで、プレーを止めなかったのがアンフェアだと報じていた。

え、どこが? 

もし塩谷がプレーを止めていたら、そんなフェアプレーはないんじゃないか? 
何かやっかみでもあるのだろうか? 

もっと言えば、八百長だって疑われる。サッカーのインテグリティーはどうなんだと言った批判に晒されるに違いない。

ムサエフが倒れているのはテレビで見ていて知っていたが、プレー全体の流れに違和感がなかったので、ビデオ映像で確認してみた。

伊東がコーナーキックを行った時、ペナルティーマークやや後ろからボールをプレーしようと前方に走りこむ三浦の左肩を、サムエフが抱きつくように左手でホールド。
それを振りほどく三浦の左手が顔付近に当たったようだ。通常のプレーのひとつに過ぎない。

しかし、サムエフは、戦線から離脱すべくゴールライン方向に動く。
そして、ゴールエリアの端で頭(顔)を押さえて倒れる。

この試合の主審は、モハメッド・アブドゥラ(UAE)40歳。2018FIFAワールドカップロシア大会でもフランス・ペルー戦を吹いている。日本の佐藤隆治レフェリーのライバルでもある。

勿論のことながら、モハメッド主審も「正しく」プレーを停止していない。

サッカー競技規則

第5条-主審

3.職権と任務
負傷
●競技者の負傷が軽い場合、ボールがアウトオブプレーになるまでプレーを続行させる
●競技者が重傷を負った場合、プレーを停止し、確実にその競技者を競技のフィールドから退出させる。

脳震盪、骨折、一旦ピッチに出て治療が必要あるほどの重傷ではない。
実際、サムエフは、その後のキックオフ時に戦線に戻り、プレーを続け、後半31分にFWのサルドル・ラシドフと戦術的な交代をしている。

では、次にボールが近くに来た時に、他の選手の邪魔となったり、交錯が危惧されたのか? 「No!」。
ゴールマウスにクロスボールが放り込まれても、GKを含むどの選手にも邪魔ではない。

塩谷がシュートされたとき、このサムエフを考えなければ、北川はオフサイドの位置にいたことになる。
北川の位置ではGKの視野を妨げることにはならないので、仮にそうであっても得点は認められる。

ところで、サムエフは、なぜゴールラインからピッチ外に出なかったのだろうか? もしピッチ外に出て、北川の近くをボールが通れば、オフサイドに陥れることも考えられた。

第11条 - オフサイド
4. 反則と罰則
主審の承認なく競技のフィールドを離れた守備側競技者は、オフサイドの判断のため、 プレーが次に停止されるまで、または、守備側チームがボールをハーフウェーラインに 向かってプレーし、ボールが自分たちのペナルティーエリアから出るまで、ゴールライ ンかタッチライン上にいるものとみなされる。

サムエフが“負傷で”ゴールラインから外に出て、その後ボールを大きくクリア、ペナルティーエリア外に出たのであれば、オフサイドラインはペナルティーマークのところにいるダブロンベク・ハシモフになり、北川をオフサイドポジションに残すこともできた。

ムサエフがなぜゴールエリア内で倒れたのか、真相は分からない。
見る限り、負傷をしたものの、ピッチ内に残ってプレーしようとサッカー選手としての義務を果たした。

また、北川をオフサイドに陥れるようなこともしていない。
そして塩谷。得点をすべくゴールに向かって攻撃(シュート)するという自分の気持ち、チームの目的をリスペクトして、プレーした。100%フェアで良い光景である。

次は、21日、会場をシャルジャに変えて、サウジアラビア戦である。
サウジアラビアはEグループ2位抜けながらもFIFAワールドカップ5回出場、アジアカップ3回優勝、中東の雄である。

これまでの対戦は、8勝1分4敗。しかし、ロシアのチケットを獲得した後ではあるものの、2017年9月の対戦では、2018FIFAワールドカップ予選最終戦で0-1と負けている。

ウズベキスタン戦、控え組がしっかり戦ってくれた。主力の休養もできた。右肩上がりの調子を維持し、先ずはベスト8に進出してくれるはずだ。

松崎康弘●文

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ライター紹介 ライター一覧

松崎康弘

松崎康弘

JFA参与・元(公財)日本サッカー協会常務理事。元審判委員長
1954年1月20日生まれ、千葉県千葉市出身。

82年28歳でサッカー4級審判員登録。90年から92年、英国勤務。現地で審判活動に従事し、92年にイングランドの1級審判員の資格を取得。
帰国後の93年1月に日本サッカー協会の1級審判員登録。95年から02年までJリーグ1部の主審として活動し、95年から99年までは国際副審も務めた。
著書に「審判目線・面白くてクセになるサッカー観戦術」「サッカーを100倍楽しむための審判入門」「ポジティブ・レフェリング」などがある。

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