日本VSウズベキスタン・100%フェア
アジアカップ2019・Fグループ、日本VSウズベキスタン。
ひとつ前のオマーン戦(1-0で勝利)から北川航也を除く先発10人を入れ替えて臨み、2-1の勝利。グループ1位抜けを果たした。
1-1で迎えた後半の12分、伊東純也が右サイドからグランダーのクロス。ウズベキスタンイスロム・トゥフタフジャエフがコーナーキックに逃げた。
そのまま伊東純也が右側からコーナーキックを行い、エルドル・ショムロドフがペナルティーエリア外に大きくクリアした。
そのボールを拾った室屋 成がクロスを上げ、三浦玄太がヘッド。
イスロム・トゥフタフジャエフの足に当たり、その後、エゴール・クリメツがクリアしたが、小さく、ボールは塩谷 司の目の間に転がる。
ペナルティーエリアのアークから約2mのところで塩谷が左足のややアウトでシュート。
GKイグナティ・ネステロフは、目の前のDFイスロム・トゥフタフジャエフに視野を遮られて反応が遅れ、ボールは向かって左のゴールに突き刺さる。
日本勝利を導く決勝点である。素晴らしい!!
得点後、三浦など多くの選手が飛んできて塩谷のゴールを祝福。とても美しい光景だ。
しかし、そこにイスロム・トゥフタフジャエフやエゴール・クリメツがやってきて、何やらジェスチャーで文句を言う。
一発触発といった感じではないが、ややヒートアップ。テンションも上がった。
ウズベキスタンの選手たちは、塩谷がシュートを放ったとき、ゴール横に頭を押さえて倒れているムサエフを指し、負傷者がいるのでプレーを停止すべきだったと言っているようだ。
翌朝、幾つかインターネット上のニュースで、プレーを止めなかったのがアンフェアだと報じていた。
え、どこが?
もし塩谷がプレーを止めていたら、そんなフェアプレーはないんじゃないか?
何かやっかみでもあるのだろうか?
もっと言えば、八百長だって疑われる。サッカーのインテグリティーはどうなんだと言った批判に晒されるに違いない。
ムサエフが倒れているのはテレビで見ていて知っていたが、プレー全体の流れに違和感がなかったので、ビデオ映像で確認してみた。
伊東がコーナーキックを行った時、ペナルティーマークやや後ろからボールをプレーしようと前方に走りこむ三浦の左肩を、サムエフが抱きつくように左手でホールド。
それを振りほどく三浦の左手が顔付近に当たったようだ。通常のプレーのひとつに過ぎない。
しかし、サムエフは、戦線から離脱すべくゴールライン方向に動く。
そして、ゴールエリアの端で頭(顔)を押さえて倒れる。
この試合の主審は、モハメッド・アブドゥラ(UAE)40歳。2018FIFAワールドカップロシア大会でもフランス・ペルー戦を吹いている。日本の佐藤隆治レフェリーのライバルでもある。
勿論のことながら、モハメッド主審も「正しく」プレーを停止していない。
サッカー競技規則
第5条-主審
3.職権と任務
負傷
●競技者の負傷が軽い場合、ボールがアウトオブプレーになるまでプレーを続行させる
●競技者が重傷を負った場合、プレーを停止し、確実にその競技者を競技のフィールドから退出させる。
脳震盪、骨折、一旦ピッチに出て治療が必要あるほどの重傷ではない。
実際、サムエフは、その後のキックオフ時に戦線に戻り、プレーを続け、後半31分にFWのサルドル・ラシドフと戦術的な交代をしている。
では、次にボールが近くに来た時に、他の選手の邪魔となったり、交錯が危惧されたのか? 「No!」。
ゴールマウスにクロスボールが放り込まれても、GKを含むどの選手にも邪魔ではない。
塩谷がシュートされたとき、このサムエフを考えなければ、北川はオフサイドの位置にいたことになる。
北川の位置ではGKの視野を妨げることにはならないので、仮にそうであっても得点は認められる。
ところで、サムエフは、なぜゴールラインからピッチ外に出なかったのだろうか? もしピッチ外に出て、北川の近くをボールが通れば、オフサイドに陥れることも考えられた。
第11条 - オフサイド
4. 反則と罰則
主審の承認なく競技のフィールドを離れた守備側競技者は、オフサイドの判断のため、 プレーが次に停止されるまで、または、守備側チームがボールをハーフウェーラインに 向かってプレーし、ボールが自分たちのペナルティーエリアから出るまで、ゴールライ ンかタッチライン上にいるものとみなされる。
サムエフが“負傷で”ゴールラインから外に出て、その後ボールを大きくクリア、ペナルティーエリア外に出たのであれば、オフサイドラインはペナルティーマークのところにいるダブロンベク・ハシモフになり、北川をオフサイドポジションに残すこともできた。
ムサエフがなぜゴールエリア内で倒れたのか、真相は分からない。
見る限り、負傷をしたものの、ピッチ内に残ってプレーしようとサッカー選手としての義務を果たした。
また、北川をオフサイドに陥れるようなこともしていない。
そして塩谷。得点をすべくゴールに向かって攻撃(シュート)するという自分の気持ち、チームの目的をリスペクトして、プレーした。100%フェアで良い光景である。
次は、21日、会場をシャルジャに変えて、サウジアラビア戦である。
サウジアラビアはEグループ2位抜けながらもFIFAワールドカップ5回出場、アジアカップ3回優勝、中東の雄である。
これまでの対戦は、8勝1分4敗。しかし、ロシアのチケットを獲得した後ではあるものの、2017年9月の対戦では、2018FIFAワールドカップ予選最終戦で0-1と負けている。
ウズベキスタン戦、控え組がしっかり戦ってくれた。主力の休養もできた。右肩上がりの調子を維持し、先ずはベスト8に進出してくれるはずだ。
松崎康弘●文
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