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知ってた?2016年はサッカーのルールが大幅改正!キックオフ・3重罰も!!

 2016/07/12 サッカー
 

日本サッカー協会の1級審判員、そして国際審判員としても活躍して来た松崎康弘氏によるサッカーレポート 『ゴール!』  2016年にサッカーの競技規則が30年来の全面改正が実施された。代表的なものはキックオフと3重罰。実際の試合でどのように反映されたのか?レポートをする

キックオフは前に蹴らなくてもOKに

Jリーグは、春(2016年は2月)に始まり秋に終了する。世界各国のシーズンはさまざまだが、競技規則は秋冬シーズンのカレンダーをベースに改正される。新しくなった規則は世界的には6月から適用され、準備期間を含め8月にスタートされるシーズンでお披露目されるといった具合だ。
今年の改正は、130年来の全面改正。大幅、多岐にわたる。また、プレーに大きく影響するものも多い。
Jリーグではシーズン途中、ファーストステージの翌週から始まったセカンドシーズン開始の7月2日(土)の適用となり、準備期間もないので大丈夫かなと大いに心配した。もっとも、すでにユーロ2016やコパアメリカ2016でも新規則は適用されていたが、問題についての報道もなく、うまく進んでいる感もある。

一番わかりやすい規則の改正は、キックオフだ。これまでキックオフはセンターマークから相手のハーフに向けて前方に蹴らなければならなかったが、どこに向けて蹴ってもよいことになった。最初は「あれっ」と思ったが、もう違和感はない。
最も混乱しそうなのが、3重罰の解消。退場なの? 警告なの? 審判も判定に難しさを感じ、選手も簡単には受け入れられないケースが出てくるなと危惧している。
 
3重罰とは、〝決定機阻止〟と言われるゴールキーパー(GK)と1対1になるような状況でファウルを犯したり、相手のシュートを手で止めたりするとレッドカードが示され、それがペナルティーエリア内だったら①PK ②退場 ③次試合出場停止という、3つの罰が下されるということである。

その選手の行為やプレーはサッカーにとって受け入られない。そんな選手はサッカーをする資格がない。この試合のプレーをご遠慮願う、というのが〝退場〟だ。
例えば、決定的なチャンス。GKと1対1になるところをファウルで止める。フィールドプレーヤーが相手のシュートを手で止める。そんなもの、サッカーじゃない。これらはかつて〝プロフェッショナルファウル〟と呼ばれ、1990年からこのような行為は、厳しく退場で処罰されることになった。サッカーがフェア(公平/公正)を確保するためには、必要な対応だ。
しかし、サッカーの興業性が高まってくると、異なった〝プロフェッショナル〟が求められるようになる。3つの罰はあまりに厳しく、退場によりその試合の人数的な不均衡が発生。優秀な人気ある選手が次節で出場できず、ファンもがっかりすることになるというのだ。
そして、今年。6年越しの検討を経て、決定機でもペナルティーエリア内でボールをプレーしようとチャレンジしたけれどファウルをしてしまった――。そんなケースならば退場とせず、警告にとどめることになった。
PKが与えられれば、得点はほぼ確実。ファウルによって阻止された決定機は、ペナルティーキックで実質的に〝回復できる〟。ただし、ボールをプレーしようとせず、手で相手を引っ張る、肩にかけて攻撃側選手の決定機を阻止することなどはダメ。ペナルティーエリア内であろうと、レッドはレッドである。

3重罰の解消・だが先日の試合では。

7月2日(土)のアビスパ福岡・浦和レッズ戦では、前半22分、福岡の金森選手が槙野選手にペナルティーエリア内で倒された。池内主審は迷わずPK、レッドカードの判定を下した。浦和の選手たちは、不満・・・。競技規則が新しくなり、エリア内での決定機の阻止は警告ではないのかと言っているようだ。
7月3日(日)、熊本・C大阪戦でもレッドカードが示された。前半23分、薗田選手がペナルティーエリア内で相手を倒し、退場が命じられたのである。3重罰は解消されるはずではなかったのか。 


 
同じファウルに対して、退場と警告のダブルスタンダードではない。ボールにプレーしようとしたが、誤って相手を倒してしまったものは警告。しかし、そもそもボールにプレーしようとした結果ではなく、ファウルをして相手の進行を止めることは認められない。プロフェッショナルファウルは、これまで通り厳しく退場で罰せられなければならない。
サッカーは足でプレーするもの。手や腕で押さえたり、引っ張ったり、押したりすることには別の意図がある。決定機を手や腕を使って止めること。そんなものは、ボールにプレーできる可能性がないのにファウルで止めることと同様、サッカーじゃない。
フィールドのどこであっても退場に値する著しいファウルや乱暴な行為。これらがエリア内で犯されてもこれまで同様に退場が命じられるは、至極当然のことである。
浦和の槙野選手、熊本の薗田選手が相手の決定機を阻止したシーン。いずれも手によるホールディングのファウルだ。
  
手や腕によるファウルかどうか。下肢での接触も伴うならば、転倒が何によるものなのか、判定は難しい。ボールにプレーできる可能性があったかどうかの判定も簡単ではない。選手の転倒がエリアのライン近くであると、ファウルがペナルティーエリア内なのか外なのかの判断も加わる。それぞれの違いによって、警告か退場か、異なってくる。
Jリーグのセカンドステージで新しい規則が適用なって、2つの難しい退場シーンが発生した。いずれも納得のいく判定だが、選手は不満。まだ、理解は進んでいない。審判員にとっても、まだまだ慣れないことは明白だ。

3重罰の解消。今年の競技規則改正には、〝2年間の試行〟との追記がある。2年後に検証、継続施行について検討されることになっているにもかかわらず、W杯予選も新しい規則によってプレーされることから、国内トップリーグであるJリーグで適用しないという選択肢はない。
あまりに短い準備期間。これだけ新しく大きく競技規則を改正するのであれば、Jリーグだけでなく世界的にも実験や長い周知期間を設けての施行として欲しかった。
困るのは、選手、審判。そして、サッカーを楽しんでいる観客や視聴者。混乱すること必至である。誰もがより早く、正しく理解し、正しくプレー、正しく判定できるよう望むばかりだ。

【了】 

松崎康弘●文

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ライター紹介 ライター一覧

松崎康弘

松崎康弘

JFA参与・元(公財)日本サッカー協会常務理事。元審判委員長
1954年1月20日生まれ、千葉県千葉市出身。

82年28歳でサッカー4級審判員登録。90年から92年、英国勤務。現地で審判活動に従事し、92年にイングランドの1級審判員の資格を取得。
帰国後の93年1月に日本サッカー協会の1級審判員登録。95年から02年までJリーグ1部の主審として活動し、95年から99年までは国際副審も務めた。
著書に「審判目線・面白くてクセになるサッカー観戦術」「サッカーを100倍楽しむための審判入門」「ポジティブ・レフェリング」などがある。

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