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選手交代は遅れてきた人のため!

 2020/08/08 サッカー
 

日本サッカー協会の1級審判員、そして国際審判員としても活躍して来た松崎康弘氏によるサッカーレポート 『ゴール!』

今回は世界的に猛威をふるうコロナウイルスで選手の交代枠を5人に増やしたが、今ままでのルール変更の歴史。そして本来のサッカーのあるべき姿について考察する。

選手交代についてCOVID-19 による暫定的改正

 

ぼーっと生きてんじゃねーよ!
と、チコちゃんに叱られそうだが、なんでサッカーでは選手交代が認められるのか調べてみた。

 

国際サッカー評議会(IFAB)はFIFAの要望を受け、5月8日に通達を発信。

 

COVID-19 による各国リーグの期間短縮、過密日程に鑑み本年内に完了することになる競技会は、1試合の交代枠を各チーム5人にすることができる、とした。

 

選手の快適な環境確保に影響を考慮してのことである。

また、2021年に完了することになる競技会について、暫定的改正をさらに延長して適用する必要があるかどうか、今後決定するとしていたのだが、この7月15日に暫定改正の期間を延長した。

これによって、2021 年7月31日までに終了予定の競技会、あるいは 2021 年7月また8月に開催予定の国際競技会においても適用可能となった。

 

COVID-19 禍はスポーツ界にも未曽有の大混乱をもたらしている。

 

その対応のため、大会期間短縮など、これ対抗するために様々な施策が行われ、それを支援するための方策も多くとられるようになった。

この暫定的改正もそのひとつであり、大いに評価され得るべきものだ。

 

サッカーで交代が認められるようになったのは“最近”、といった認識をしていた。

 

また、交代の理由は、“負傷者が発生したときの対応”とばかり思っていた。

 

しかしながら、よく調べてみるとそうでもなく、ずいぶんと昔から、また負傷者対応だけが主たる理由でなかったことも分かった。

 

遅れて到着した選手が交代して出場できるようにする

 

グラスルーツの試合ならともかく、競技規則がしっかりと適用されるトップの試合ではありえない。

 

もっとも、19世紀や20世紀初頭であると交通機関の発達も十分でなく、万全を期したとしても試合開始時間にきちんとつけなかったのだろう。

遅れて到着した選手のために交代枠を残しておいたとの記事を読むことができる。

 

 

1889年4月15日、レクサムで行われたスコットランド・ウェールズ戦。

れっきとした国際試合だ。その試合、ウェールズのゴールキーパーのジム・トレーナーは、試合に来なかった(来れなくなった?)。

 

そこで、ジムの代わりにサム・ジラムがゴールキーパーを務めることになったのだが、試合を開始してから約20分間、サムが来るまで、近くに住んでいたアマチュアのアルフ・パフという選手にゴールキーパーとして出場してもらったという記録がある。

 

Wikipedia調べで恐縮だが、 19世紀ではこの手の交代は多く行われていたようだ。

 

競技規則が整備されてきてからは、1953年に、親善試合や練習試合を除いて負傷した場合に限りゴールキーパーはいつでも、フィールドプレーヤーは2人まで前半に限って交代が認められ、1958年には後半にも交代が認められるようになった。

その後、1994年にゴールキーパーに限り3人目の交代ができるようになって、翌1995年にはゴールキーパーの制限がなくなり、ポジションに関係なく3人の交代ができるようになった。記憶に新しい。

この頃Jリーグでは、特別ルールが導入されていた。

 

リーグ戦の試合であっても、引き分けがなかった。90分の戦いの結果同点だったら、Vゴールによる延長戦、PK戦。

 

そして、延長戦に限り4人目の交代が認められていた。

 

この延長戦での4人目の交代導入、2018/19年競技規則の改正で正式に導入されることになる。

 

当時、FIFAのブラッター会長は、際限ない交代数の増に不快感を示していたと聞いた。

 

グラスルーツを除けば、サッカーは11人、90分間で行うもの。

 

90分間、11人でペース配分も含め、相手に対応するように戦術を構築し、プレーする。それが基本だ。

 

しかし、会長が変われば、組織の考え方も変わる。交代でリフレッシュしたチームで、試合の最後の最後までスピードあるダイナミックにプレーできるようにする。

 

サッカーの質も向上し魅力的になり、多くのファンがみる。商品としての価値も上がるに違いない。

 

様々な駆け引きがあったのだろう。交代数増については国際サッカー評議会(IFAB)に毎年のように提案されていたが、そのたびに棄却されていた。

 

しかし、2年前、延長戦に限ってだが追加が認められ、4人となった。

 

コロナ禍対策。暫定的とは言え、5人の交代ができる。

 

ゴールキーパーを除けば半分の選手を入れ替えることができる。

 

チームのリフレッシュもさることながら、選手の特徴を勘案しての戦術の変更も可能となる。なかなか面白い競技規則改正案だ。

「試合の最後の最後まで、スピードが落ちることない、より魅力あるサッカーを!」

時代が求めることに応じサッカーは変化することは必要だ。

 

本来のサッカーの本質は11人対11人

 

しかしながら、90分間を11人でプレーするというのがサッカーだったはず。商品価値アップのためだけに、サッカーの本質まで変化させないだろうか。

 

フットサルは、ピッチ上では5人でプレーするのだが、交代が自由に行えるため、9人の交代要員は競技者と変わらない。

 

実態は14人対14人でプレーしているようなもの。

 

5人の交代が常に用いられるようになれば、16人対16人でプレーすることがサッカーにならないだろうか?

各ハーフに1回の飲水タイムを導入案も面白い。

 

実態として戦術的指示も行え、この時間を用いて多くのTVコマーシャルを入れるスポーツ番組も作ることができ、これもサッカーに新たな収益をもたらすかもしれない。

結果的に4ピリオドの試合となることは、どうなんだろう?

さらに危惧されるのは、クラブ間の経済格差である。

 

ビッグクラブは、金にものを言わせ、先発から交代要員まで優秀でしっかりトップで戦える選手を用意することができる。

 

一方弱小クラブは、常に人数のハンディキャップ、また、トップ選手の疲労を抱えながら戦わなくてはならない。

国際試合も同様だ、選手層を厚く用意できるサッカー強国のみが常に予選を勝ち抜き、ワールドカップ出場などの恩恵に浴することができることになる。

 

サッカーやリーグのインテグリティーが毀損されないだろうか。

サッカーは15人対15人で戦うというスポーツと変更する。

 

そのように変化していくことも悪くはなさそうにも思える。

 

しかし、本来のサッカーとはそうだったのか、競技者数といった、ほんの一部ではあるもののサッカーの本質を変えていくことが良いのかどうかしっかりと考えていく必要がある。

コロナ対策は良い。しかし、コロナに乗じてのなし崩し的な交代数増は、勘弁してもらいたい。

 

「遅れてきた選手を救うため」。

 

古き良き時代の選手交代の考え方は、ほのぼのとしている。この記事を書くにあたり、なかなか味わい深い、過去を発見させてもらった。

松崎康弘●文

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ライター紹介 ライター一覧

松崎康弘

松崎康弘

(公財)日本サッカー協会常務理事。元審判委員長
1954年1月20日生まれ、千葉県千葉市出身。

82年28歳でサッカー4級審判員登録。90年から92年、英国勤務。現地で審判活動に従事し、92年にイングランドの1級審判員の資格を取得。
帰国後の93年1月に日本サッカー協会の1級審判員登録。95年から02年までJリーグ1部の主審として活動し、95年から99年までは国際副審も務めた。
著書に「審判目線・面白くてクセになるサッカー観戦術」「サッカーを100倍楽しむための審判入門」「ポジティブ・レフェリング」などがある。

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