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サッカー、お前もか!~ビデオ判定が導入のために、世界のトップリーグで導入実験が行われる~

 2016/05/24 サッカー
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日本サッカー協会の1級審判員、そして国際審判員としても活躍して来た松崎康弘氏によるサッカーレポート 『ゴール!』 スタート! 
独自の見解を持ちながら、サッカーの魅力を多角度から解説する。

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サッカーのルールはFIFAではなく国際サッカー評議会で統括されている

サッカーの競技規則ができたのは1863年。ずいぶん昔の話だ。世界で最初のサッカー規則として統一されたものは14条から成り、ボールを手で取ってよかったりと(フェアキャッチ)、今とは隔世の感がある。

以降、サッカーの進化やその時代が求める変化に応じて改正が重ねられ、現在の競技規則となった。それでも“サッカーは人がプレーし、人が判定する”という精神は一貫して変わりがなかったが、そのサッカーもビデオに判定を委ねることになりそうだ。

世界のサッカーを統括するのは、FIFA(国際サッカー連盟)である。昨年、会長他の汚職疑惑で世界を震撼させたこともあり、サッカーに詳しくない人であってもその名称を聞いたことがあるだろう。

だが、サッカーの競技規則は他のスポーツと異なり、統括するのは世界のFIFAではない。国際サッカー評議会(IFAB)という英国4協会(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)に、他の207か国と地域を代表するFIFAが入った別組織において検討、改正されているのである。

IFABの設立は1882年で、1904年のFIFA設立より18年も前のことだ。世界初のサッカーの国際試合は1872年のイングランド・スコットランド戦。英国という国は、サッカー界では(ラグビー界でも)4つの“国”から構成されている。

国際サッカー評議会はこの4ヶ国の国際試合を円滑運営するべく競技規則を検討することに端を発し、今に至っている。サッカーの母国として、伝統と権益が100年を超えて保持されていることには驚嘆する。

FIFAであっても、ヨーロッパ、アジア、南米他の大陸連盟、サッカーを行っている諸国でさえも、このシステムを容認している。

変わるルール。サッカーもビデオ判定の時代に

国際サッカー評議会は自身をサッカーの“競技規則の監理者”だと自負し、より時代にあったものに規則を改正してきた。

例えば、オフサイド。サッカーが誕生した当時はラグビーのようなものだったものが、ゴールキーパーを含め2人(最初は3人)の守備側選手がいれば「ノットオフサイド」になった。

縦の攻撃の柔軟性を高めたことによりスピード感が増し、足でボールを蹴り進めるスポーツのため、広いフィールドをより早く攻撃することでサッカーらしさがより醸し出されるようになった。

他方、“伝統を重んじる”側面も多々あった。他のスポーツでは審判の判定は尊重するものの、より精度を高めるために機械を導入した。野球や、テニス・バレーボールのチャレンジ、ラグビーのTMOなどである。

一方のサッカーは、それをかたくなに拒んできた。導入可否について研究はしていたが、ボールがゴールに入ったかどうかを機械が判定するゴールラインテクノロジー(GLT)でさえ、検討の凍結を宣言していた。2012年6月までは・・・。

それが大きく方向転換することになったのは、サッカーワールドカップ(WC)南アフリカ大会イングランド・ドイツ戦がきっかけとなった。明らかにボールがゴールインしたのにもかかわらずノーゴールの判定になったからだ。

1年半後、日本で行われたクラブワールドカップ。完成を見たGLTがお披露目された。FIFAはこれにより試合の品質がより高まると自画自賛し、以降さまざまなワールドカップで使用している。

2014年ブラジル・ワールドカップは、フランス・ホンジュラス戦で、人間では判断できないギリギリのゴールインを得点と判定した。これには確かに、感動を覚えたものである。

サッカーも今、変革期を迎えようとしている。

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追加副審という方法も

いったん舵が切られると、流れは速い。他のスポーツでビデオ判定導入、また正確な判定の提供が推進されると、サッカーにおいてもビデオ判定が強く求められるようになってきた。

そして、2016年3月の国際サッカー評議会の年次総会で、ビデオ判定を世界各国のトップリーグで実験してみることが承認されたのだった。

ヨーロッパのサッカーでよく見られるのが、追加副審である。

両ゴールに1人ずつ審判員が配置され、ボールがゴールに入ったかペナルティーエリアでファウルがあったかなどを判断して、主審の判定を援助する。

これをペナルティーエリアだけに限ることなく、フィールド上のどこでも、退場になるファウルがあったか、対象選手を間違えてイエローカードを出していないかなどでもビデオで検証する。

現在の考えられている方法は、ビデオで判定する審判員(VAR)が主審の間違いを気づいたら、あるいは主審の求めにもとづき、ビデオでその事実を検証する。

検証結果を無線で主審に伝え、主審はI-Padで確認、あるいはVARの判断を受け入れて最終判定するというものだ。

機械が判定するゴールラインテクノロジーと同様、良質な判定の提供でサッカーのクオリティーが上がり、歓迎されるべきことかもしれない。

ビデオ判定の問題点

懸念される点もある。昨年のラグビー・ワールドカップで感じたことだが、ビデオ判定のためにどれだけ時間が費やされ、そのたびに間延びしたことか。

スピードが求められるサッカー。中断時間が試合の流れを変えたり、ゲームプランに影響を与えたりするのではないだろうか。

ペナルティーエリア内で選手が転倒する。PKかと思いきや、主審はノーファウル。ボールはカウンターアタックで相手ゴールまで運ばれ、シュート、ゴールイン。そこでビデオで判定する審判員(VAR)がPKの判定に疑問を投げかけ、検証に至る。得点が取り消されて相手がPKで得点。結果、大きな、大きな混乱がもたされる。

これから行われるVARの実験で実効的な解決策を講じることができるのか、とても心配である。

審判員は、長い時間をかけて事象を検証できる裁判官とは異なる。さまざまな事象をフィールド上のその場で判断することが求められ、しかも判定を下すための情報、時間は限られている。

多くの即断即決が、90分間という限られた時間でサッカーの素晴らしい数々のプレーを保証するのだ。

選手や監督もミスをする。シュートやパスだけでなく、戦術的な判断ミスも然りである。安直に審判のミスを擁護するつもりもないし良質な判定の提供には大賛成ではあるが、審判のミスであっても試合の一部である。

「それも面白い」と書くと語弊があるかもしれないが、審判の大きなミスで選手のメンタリティーが変わることもある。

さらには、戦術を変える必要が生じることも・・・。また、審判も選手との対応を考えてのレフェリングをしていく。そこには、選手と審判との人間模様も垣間見える。サッカーの試合の異なった側面でもあるだろう。

ビデオ判定導入のスケジュール

ビデオ判定という、新たな時代の到来。しかし、これがすぐに明日のJリーグの試合やワールドカップ予選で導入されるということではない。

まずは2年間、実験を希望するリーグで実施してみて利点と問題点を整理し、可否を判断しようという段階である。

世界のいくつかの国が、この実験実施を希望していると聞いている。日本もそのひとつになる。今シーズンはビデオ映像入手やビデオで判定する審判員(VAR)養成などの準備期間としても、来シーズンには世界に先んじて“サッカーのビデオ判定”がJリーグで導入されるかもしれない。楽しみなのか、危惧なのか。先ずは、見てみたいものである。

【了】 松崎康弘●文

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松崎康弘

松崎康弘

(公財)日本サッカー協会常務理事。元審判委員長

1954年1月20日生まれ、千葉県千葉市出身。


82年28歳でサッカー4級審判員登録。90年から92年、英国勤務。現地で審判活動に従事し、92年にイングランドの1級審判員の資格を取得。

帰国後の93年1月に日本サッカー協会の1級審判員登録。95年から02年までJリーグ1部の主審として活動し、95年から99年までは国際副審も務めた。

著書に「審判目線・面白くてクセになるサッカー観戦術」「サッカーを100倍楽しむための審判入門」「ポジティブ・レフェリング」などがある。


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