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名門校・名門クラブに入らなくてもプロサッカー選手になれる!20人以上プロ選手を育成した「FTA」とは

 2018/05/11 サッカー
 

プロサッカー選手へのステップに何が必要か。 その良し悪しを判断できる文化を根付かせたい。
そう語るのはプロサッカー選手を20人以上輩出する「フットボールトライアウトアカデミー」を主宰する宝槻慶仁氏だ。

サッカーのテクニック以上に必要なものがあるという。

サッカー選手である前に、優れた人間であれ

宝槻慶仁氏が設立したフットボールトライアウトアカデミー(以下FTA)を経由して、プロ契約を結んだ選手のほとんどが、すばらしい経歴の持ち主ではない。

中学や高校、大学でなかなか活躍できなかった選手が、プロとしての道を切り開いているのだ。

「技術レベルはどうであれ、プロサッカー選手になるためには、プロサッカー選手に相応しい人間になることが大事だと考えています」

 いくらサッカーのレベルが高くても、人間性に問題があれば、プロとして成功するのは難しいのではないかと宝槻氏は考えている。

「優れた選手であっても、選手としてだけでなく、人間としても成長し続けられるかが最大のポイントになると考えています。サッカーのスキルばかりを追い求めていてはダメ。人間の成長こそがサッカーのスキルの成長につながるはずなので」

自らもプレーをして教える宝槻氏

プロサッカー選手になるというのは、プロ契約するだけで終わりではない。下部リーグで契約したのであれば、トップリーグを目指してさらなる努力が必要になる。サッカー選手としてのスキルはもちろん、人間的にもトップリーグにふさわしい人間になる必要があるのだ。

「ある選手が、タイの2部リーグと契約できたのですが、1シーズンで戦力外になったんです。そこでその選手は、再び2部リーグの他チームと契約することに。せっかくプロ契約にたどり着いても、同じレベルに留まったまま。このような横ばい状態が数年続くと、モチベーションが落ち、サッカーを辞めるということに繋がる。だから、今の環境に適応しながら、上を目指せるように成長し続けていけるかが重要なんです。もちろん、人間性も含めてです」

 このような負のループに陥ってしまう選手を多く見てきたという宝槻氏。その多くが、サッカーばかりに目を向けてきたため、サッカーが上手くいかなくなると全てのモチベーションが低下してしまう。だからこそ、広い視野でサッカーを捉えられるような、人間としての成長もプロサッカー選手で成功するためには不可欠な要素なのだ。

結果よりも過程を求められる選手が増えてほしい

 プロサッカー選手を目指し、今では選手育成に力を入れている宝槻氏に、理想のプロサッカー選手は誰だと思いますかという質問を投げてみた。

「正直、一流のプロ選手とは直接会ったことがないので、理想って呼べる選手がいないというのが本音です。しかし、自分自身はがどうすれば結果が伴うか、自分がこうするってなったとき、その過程にしっかりと目を向けられるか。それをできる選手は、サッカーに限らず、すばらしい選手という印象が強いです」

 サッカー選手ではないが、体操の内村航平選手や白井健三選手、競泳の萩野公介選手は、インタビューなどを聞いていても、過程を大事にしたり、周りへの感謝を口にすることが多いので、理想に当てはまるのではないかと宝槻氏は語る。

「結果を出すために何かをするというのではなく、今までやってきたこと、持っているものすべてを出せば、結果はついてくるという意識が大切なのだと思います。スポーツ選手に限らず、インタビューされる側の言動は、こうした着眼点を持ったひとが好印象を持たれるのではないでしょうか」

「プロサッカー選手だから幸せなのじゃなくて、幸せだからプロサッカー選手なんだということを体現している人が僕の理想です。僕が元ブラジル代表のロナウジーニョが好きなのも、それが大きな理由なんです」

 プロサッカー選手として活躍しているから裕福と感じたり、いろんな地位も名誉もあるから幸せだと感じたりする人もいるかもしれない。しかし、もともと幸せを感じられる人間であれば、つらい練習も乗り越えることが楽しく、何かを成し遂げようとするとき、それまでの過程をしっかりと見据えることができるのだと宝槻氏は考えているという。

サッカービジネスはシビア。マネージメントまで寄り添う宝槻氏

 インターネットの普及で、誰でもさまざまな情報を得られるようになった現代。宝槻氏は、こんな時代だからこそ、正しい情報をしっかりと届けるということにも心がけている。

「サッカーのビジネスはとてもシビアです。金の切れ目が縁の切れ目ということわざもありますが、海外の代理人やマネージメント会社とこじれる要因はだいたいお金なんです。でも、サッカーばかりしてきた高校生や大学生は、そのことを知らない。プロ選手になるというのは個人事業主になるってことですから、自分でお金のやりとりも管理するなど、最低限の社会常識はしっかり伝えるようにしています」

 プロになることの厳しさも、若い世代に教えていく。技術ばかりに目を向けないという宝槻氏の信念が表れたものだろう。そんな彼に、FTAがどのように発展していくのが理想かを訪ねてみた。

「僕にできることは、FTAに来た選手にこうやったらプロの道が開かれるということを一緒に模索してあげること。選手たちに寄り添う気持ちを忘れず、立ち上げからやってきたことをやり続けることが大切だと思います」

 そして、次のように話を続けた。

「知り得なかった選択肢の幅を伝えることで、サッカーを通じて人間としても向上し続けられる選手を多く輩出したい。それが実現できれば、面白いことが起きると思うので。大事なのは面白いことを起こそうとするんじゃなくて、面白いことがいつでも起こせる人間になっていることが大事かなって」

自身の活動を開示していくことで、こんな職業,選択肢があることを世間一般にも知ってもらいたい。そうすれば、プロサッカー選手になるには、絶対に名門校・名門クラブでレギュラーにならなければプロになれないという日本サッカー界にこびりついた古い概念も崩れてくる。

宝槻氏は、プロを目指す選手が多くの選択肢から好きなものを選べるという新たな文化を築き上げるパイオニアとして、これからも活動を続けていく。

松野友克●文

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ライター紹介 ライター一覧

松野友克

松野友克

1976年、福島県南相馬市生まれ。
小学生のときは少年野球、中学・高校ではバレーボールに熱中していた。高校時代にスポーツ雑誌の仕事に携わりたいと上京を決意。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、複数の編集プロダクションに勤務したのちフリーランスのライター・編集者として独立した。
多ジャンルの雑誌、ムック本・書籍を制作する中でプロ野球、女子7人制など多くのスポーツ取材を行う。趣味はスポーツ観戦、ゴルフ。

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