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アジアカップ準決勝!基本の〝き〟。笛が鳴るまで、プレーを続ける

 2019/01/31 サッカー
 

アジアカップ準決勝の対イラン戦。

下馬評では「厳しい」が多かったが、日本が3-0で快心の勝利を飾った。嬉しい! 

吉田麻也と冨安健洋の集中力を欠かさない安定的な守備や大迫勇也の鮮やかな得点、堂安律の活躍は、既に様々に報じられている。

ヒヤッとしたのは、前半22分。権田修一が自らのパスミスからサルダル・アズムンにシュートを許したとき、また、後半16分の直接FKくらいだろうか。

いずれも権田が好セーブでゴールを防いでいる。

試合後半のイラン選手の疲労度を見ていると、どうあれ勝てたのだろうと勝手に思った。

しかし、これらのうち1つでも決まっていれば、それなりに難しいプレーを強いられることになったに違いない。

「ボール・ウォッチャーになるな」「笛が鳴るまでプレーを続けろ」。
小さいころから言われていることだ。

しかし、後半11分。柴崎岳からのボールを大迫が南野拓実にパスしたシーン。

南野は、ドリブルでペナルティーエリアに入る直前、ホセイン・カナーニと接触か? いや、両足を揃えた倒れ方を見るとダイブかもしれない。

周りにいたイランの4選手も含め足を止め、クリス・バース主審(オーストラリア)にシミュレーションをアピールする。

当の南野は、主審が笛を吹かないと見るやすぐさま立ち上がってボールを追いかけ、クロスを上げる。

そして、中央でフリーとなった大迫がヘディング。日本の得点となる。

南野の頑張りは当然ながら、称賛。また、先ずは主審の判定を委ね、それに基づきプレーを続けるという“基本のき”を忘れたイランの凡ミスにも助けられた。

日本の2点目も、?の付く判定だった。

後半の19分。またもや南野。左足から中央へとグランダーのパスを出すと、モルテザ・プーラリガンジの左手に当たる。

南野が両手を上げてハンドのアピール。目の前でこのプレーを見ていたバース主審は、ボールの動きを見続け、ボールがエフサン・ハジサフィに拾われそうになったときに、笛。そして、ペナルティマークを示した。

その後のバース主審は、毅然としていた。

イラン選手の抗議を一切受け付けない。しかし、なぜかVARと交信を開始。

PKの判定から1分半後、VARのジェスチャー。ピッチ外のモニターに走り寄る。

モニターの確認にも時間を要した。何度も何度も確認した後、最終的にPKの判定とする。手にボールが当たったのは明らかだったし、VARで確認されてしまったので、イランの選手の抗議はない。

その後、大迫がPKを行い。冷静にGKの逆を突き、得点。2―0の日本リードとした。

この3月2日(土)、サッカー競技規則の改正を司る「国際サッカー評議会」の年次総会がスコットランドで開催され、ハンドについても明確な解釈が示される予定だが、映像を見る限り、未必の故意も含め、手でボールを扱うという意図は見えない。

プーラリガンジは南野のゴール方向に向かってのパスか、あるいはシュートをカットすべく体を倒していた。左手はかばい手に過ぎなく、そこにボールが来た。

翌日、多くの審判関係者と話したが、誰一人としてハンドとはしていなかった。

<サッカー競技規則>
第12条 ― ファウルと不正行為

競技者が次の反則のいずれかを犯した場合、直接フリーキックが与えられる:
● ボールを意図的に手または腕で扱う(ゴールキーパーが自分のペナルティーエリア内にあるボールを扱う場合を除く)。

 

それにしても、これまでこの大会、オマーン戦でのPKの幸運、またこの試合も含め、主審、VARに助けられているといった感触を持つ。

審判団にそんな意図は決してないのだが。

最後に原口元気が疲れ果てたラミン・レザイーアンを振り切って、ダメ押しの3点目を取った後のアディショナルタイム3分。

日本のペナルティーエリアのすぐ外で乱闘騒ぎ。大迫が倒れている。

映像からは理由が見て取れないが、サルダル・アズムンが右手で柴崎の顔を強く押し、それに日本選手が大きく反応したようだ。

バース主審は、アズムンの行為を数メートル前方から確認している。にもかかわらず、無線で何度も交信、ようやくアズムンにイエローカードを示した。

エフサン・ハジサフィに向かって行った長友佑都にも、だ。

バース主審は、アズムンの行為を見ていたにもかかわらず、なぜ時間をかけて確認していたのか。レッドカードも考えられる? もしそうであれば、VARのシグナルを示し、モニターで確認しなければならないのではないか。

それにしても、退場者が出なくてほっとした。

次の試合は、いよいよ決勝。日本は5回目の優勝を目指す。

相手は、ザッケローニ率いたUAEを4―0で下したカタールだ。

2022FIFAワールドカップ・カタール大会成功のためにも、アジアカップ優勝の称号は欲しいところ。

その強化目的もあり、カタールは日本と共に他国大陸枠で今年のコパアメリカに招待されている。アル・モエズアリ他、しっかりと対応しなければならない選手も多い。

不幸なことにこのアジアカップ開催国のUAEとカタールは、断交状態。

準決勝でも、UAEのサポーターが問題を起こしている。決勝の舞台での蛮行はできる限り避けてもらいたいものだ。

2月1日(金)の決勝。是が非でも、アジアカップを日本に持ち帰ってもらいたい。応援に、今まで以上に力が入る。

松崎康弘●文

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ライター紹介 ライター一覧

松崎康弘

松崎康弘

JFA参与・元(公財)日本サッカー協会常務理事。元審判委員長
1954年1月20日生まれ、千葉県千葉市出身。

82年28歳でサッカー4級審判員登録。90年から92年、英国勤務。現地で審判活動に従事し、92年にイングランドの1級審判員の資格を取得。
帰国後の93年1月に日本サッカー協会の1級審判員登録。95年から02年までJリーグ1部の主審として活動し、95年から99年までは国際副審も務めた。
著書に「審判目線・面白くてクセになるサッカー観戦術」「サッカーを100倍楽しむための審判入門」「ポジティブ・レフェリング」などがある。

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